醒睡笑 巻3 自堕落
ある出家、深く隠して鱠(なます)を食ひけるところへ、ふと檀那来たれり。せんかたなさに、皿ともに頭(あたま)へうつぶけ、手にて抑へたれば、頬からおとがひへ汁の流るるを見付け「こなた1)には腫物(しゆもつ)ができ参らせたか2)と問ふ。「おう」と言へばよかりしを、あまりに肝をつぶし、「いや、にはかにぬた鱠ができて候ふ」といひけり。
一 ある出家ふかくかくして鱠(なます)をくひける処へ ふと檀那来れり為方なさに皿ともにあ たまへうつふけ手にてをさへたれは頬(ほう)/n3-46l
からおとがいへ汁のながるるを見つけと なたには腫(しゆ)物ができまいらせたるととふおふ といへばよかりしをあまりに肝(きも)をつぶし いや俄にぬたなますができて候と いひけり/n3-47r