醒睡笑 巻3 自堕落
信心深き人、山寺に詣で、ある僧坊に宿を借り、本堂の観世音1)に通夜しけるついで、老僧に対面し、「この寺家(じけ)に法師いかほど候ふや。中にも勤行不退(ごんぎやうふたい)の方やある」など、委細に尋ねければ、老僧の返答に、「この寺に尊い者は、わが親子、隣の坊主の聟舅(むこしうと)」。
一 信心ふかき人山寺にまうてある僧坊に 宿をかり本堂の観世音に通夜(つや)しける つゐで老僧に対面し此寺家に法師 いかほど候や中にも勤行不退(ごんぎやうふたい)のかたやある など委細に尋ければ老僧の返答(へんとう) に此寺にたうとい者は我(われ)親子隣(となり)の坊主の 聟(むこ)しうと/n3-43r