醒睡笑 巻3 不文字
侍めきたる者の、主(しう)に向ひ、おかべの汁・おかべの菜1)と言ふを、「さやうの言葉は女房衆の上に言ふことぞ」と叱られ、「げにも」と思ひゐけるが、ある時、主の上臈(じやうらふ)に供して振舞(ふるまひ)より帰りたるに、主人、座敷の始終を問はる。「朝食の上に囃子(はやし)の候ひつる」と語る。「謡(うたひ)はなになに」などとありしかば、「しかとは存ぜず候ふ。なにも、豆腐ごしに承りてあるほどに」と。
一 侍めきたる者の主(しう)にむかひおかへのしるおかべ のさいといふをさやうのことばは女房衆の上 にいふ事そとしかられけにもと思ひゐけるが ある時主の上臈(らう)にともしてふるまひより帰り たるに主人座敷の始終(しじう)をとはる朝食の 上にはやしの候つるとかたる謡(うたひ)はなになに なととありしかはしかとは存せす候なにも/n3-18l
たうふごしに承りてあるほとにと/n3-19r