醒睡笑 巻2 吝太郎(しはたらう)
家主朝食をくふところへ、常に寄り合ふ人来たりぬ。「何と、飯(めし)は、はや過ぎたるか」と問ふに、「いまだし」。「あらおたのもしや」とてかまはず。また人来る時、「飯は食はれぬか」と問ふ。「はや過ぎたり」と言ふ。「あらお心やすや」。
とかく、くれまいじや。1)
君子に三つの費(つひえ)あり。飲食その中にあらず。幼くして学びて、老いて忘るる、これ一つの費。君に功あつて軽く背(そむ)く。これ二つの費。久しく交はりて中絶す。これ三つの費。
一 家主朝食をくふ処へつねによりあふ人来 りぬなにとめしははや過たるかととふに いまたしあらおたのもしやとてかまはす 又人来る時めしはくはれぬかととふはや過/n2-39l
たりといふあらおこころやすや とかくくれまいじや 君子に三の費あり飲食其中にあらす 幼して学て老て忘是一つの費君に 功あつて軽背これ二つの費久まじはり て中絶すこれ三つの費/n2-40r