醒睡笑 巻2 躻(うつけ)
金春禅風1)、毎朝の看経(かんきん)怠慢なし。ある朝、艮(うしとら)の方に向ひ、手を合はせ、数珠をもみ、「そのもの、そのもの」とばかりにて、神の名も仏の名もさらに出でざりしかば、そばにある者、「春日大明神かや」。「それそれ、それを春日春日」と。
これは健忘(けんばう)とて、大智の上にもある病なり。あやまりにあらず。されども、時にあたりてはうつとりのやうにて、此部に入る。
一 金春禅風毎朝の看経怠慢なしある朝 艮方にむかひ手を合数珠をもみそのもの そのものとはかりにて神の名も仏の名も 更に出さりしかはそはにある者春日大明神 かやそれそれ其を春日春日と是は健忘と て大智の上にもある病也あやまりにあらす/n2-27r
されとも時にあたりてはうつとりのやうにて 此部に入/n2-27l