醒睡笑 巻2 躻(うつけ)
ある人、銭を埋(うづ)む時、「かまへて、人の目には蛇に見えて、わが見る時ばかり銭になれよ」と言ふを、内の者聞きゐて、銭を掘りて取り替へ、蛇を入れて置きけり。
件(くだん)の亭主、後に掘りて見れば蛇あり。「やれ、俺じや。やれ、見忘れたか」と幾度(いくたび)も名乗りつるこそ聞きごとなれ。
一 有人銭をうつむ時かまへて人の目には蛇に見 えてわか見る時斗銭になれよといふを内 の者聞居て銭をほりてとりかへ蛇をいれて/n2-26l
をきけり件の亭主後にほりて見れは蛇有 やれをれしややれ見忘れたかと幾度もなのり つるこそ聞事なれ/n2-27r