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text:yomeiuji:uji132 [2014/04/17 01:56] – 作成 Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji132 [2014/10/11 01:44] Satoshi Nakagawa
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 +宇治拾遺物語
 ====== 第132話(巻11・第8話)則光、盗人を切る事 ====== ====== 第132話(巻11・第8話)則光、盗人を切る事 ======
  
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 「なに男にか」とみるほどに、雑色の走よりきて、「あの男の盗人、かたきにあひてつかうまつりたると申」といひければ、「うれしくもいふなる男かな」とおもふ程に、車の前に乗たる殿上人の、「かの男めしよせよ。子細とはん」といへば、雑色走よりて、めしもてきたり。みれば、たかづらひげにて、をとがひそり、鼻さがりたり。赤ひげなる男の、血目にみなして、片膝つきて、太刀の束に手をかけてゐたり。 「なに男にか」とみるほどに、雑色の走よりきて、「あの男の盗人、かたきにあひてつかうまつりたると申」といひければ、「うれしくもいふなる男かな」とおもふ程に、車の前に乗たる殿上人の、「かの男めしよせよ。子細とはん」といへば、雑色走よりて、めしもてきたり。みれば、たかづらひげにて、をとがひそり、鼻さがりたり。赤ひげなる男の、血目にみなして、片膝つきて、太刀の束に手をかけてゐたり。
  
-「いかなりつる事ぞ」ととへば、「此夜中ばかりに、物へまかるとて、ここをまかり過つる程に、物の三人、『おれはまさにまかり過なんや』と申て、走つづきてまうできつるを、『盗人なめり』思給へて、あへくらべふせて候也。今朝みれば、なにがしを見なしと思たまふべきやつ原にてさぶらひければ、敵にて仕りたりけるなめりと思給れば、しや頭どもをまつて、かくさぶらふなり」と、たちゐぬ。+「いかなりつる事ぞ」ととへば、「此夜中ばかりに、物へまかるとて、ここをまかり過つる程に、物の三人、『おれはまさにまかり過なんや』と申て、走つづきてまうできつるを、『盗人なめり』思給へて、あへくらべふせて候也。今朝みれば、なにがしを見なしと思たまふべきやつ原にてさぶらひければ、敵にて仕りたりけるなめりと思給れば、しや頭どもをまつて、かくさぶらふなり」と、たちゐぬ。
  
 をよびをさしなどかたりたれば、人々「さてさて」といひてとひきけば、いとどくるふやうにしてかたりおる。そのときにぞ、人にゆづりえて、面もたげられてみける。 をよびをさしなどかたりたれば、人々「さてさて」といひてとひきけば、いとどくるふやうにしてかたりおる。そのときにぞ、人にゆづりえて、面もたげられてみける。
  
 「けしきやしるからん」と人しれず思たりけれど、我となのるもののいできたりければ、それにゆづりてやみしと、老て後に子どもにぞかたける。 「けしきやしるからん」と人しれず思たりけれど、我となのるもののいできたりければ、それにゆづりてやみしと、老て後に子どもにぞかたける。
text/yomeiuji/uji132.txt · 最終更新: 2019/06/24 19:09 by Satoshi Nakagawa