text:yomeiuji:uji119
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text:yomeiuji:uji119 [2014/10/07 19:17] – Satoshi Nakagawa | text:yomeiuji:uji119 [2016/11/03 02:28] – [第119話(巻10・第6話)吾嬬人、生贄を止むる事] Satoshi Nakagawa | ||
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かかる程に、一人の神主に神つきていふやう、「かふより後、さらにさらにこの生贄をせじ。ながくとどめてん。人をころす事、こりともこりぬ。命をたつこと、今よりながくし侍らじ。又、我をかくしつとて、この男、とかくし、又、けふの生贄にあたりつる人のゆかりを、れうじわづらはすべからず。あやまりて、その人の子孫のすゑずゑにいたるまで、我まもりとならん。ただ、とくとく此たびのわが命をこひうけよ。いとかなし。我をたすけよ」とのたまへば、宮司、神主より初て、おほくの人ども、おどろきをなして、みな社の内に入たちてさはぎあはてて、手をすりて、「ことはりおのづからさぞ侍る。ただ御神にゆるし給へ。御神もよくぞ仰らるる」といへるも、このあづま人、「さなすかされそ。人の命をたち、ころす物なれば、きやつにもののわびしさしらせんとおもふなり。我身こそあなれ、ただころされん、くるしからず」といひて、更にゆるさず。 | かかる程に、一人の神主に神つきていふやう、「かふより後、さらにさらにこの生贄をせじ。ながくとどめてん。人をころす事、こりともこりぬ。命をたつこと、今よりながくし侍らじ。又、我をかくしつとて、この男、とかくし、又、けふの生贄にあたりつる人のゆかりを、れうじわづらはすべからず。あやまりて、その人の子孫のすゑずゑにいたるまで、我まもりとならん。ただ、とくとく此たびのわが命をこひうけよ。いとかなし。我をたすけよ」とのたまへば、宮司、神主より初て、おほくの人ども、おどろきをなして、みな社の内に入たちてさはぎあはてて、手をすりて、「ことはりおのづからさぞ侍る。ただ御神にゆるし給へ。御神もよくぞ仰らるる」といへるも、このあづま人、「さなすかされそ。人の命をたち、ころす物なれば、きやつにもののわびしさしらせんとおもふなり。我身こそあなれ、ただころされん、くるしからず」といひて、更にゆるさず。 | ||
- | かかる程に、此猿のくびはきりはなされぬと見ゆれば、宮つかさも手まどひして、まことにすべきかたなければ、いみじきちかごとどもをたてて、祈申て、「今より後はかかる事、更に更にすべからず」など神もいへば、「さらばよしよし。今より後はかかる事なせそ」といひふくめてゆるしつ。さて、それよりのちは、すべていけにゑにせずなりにけり。 | + | かかる程に、此猿のくびはきりはなされぬと見ゆれば、宮つかさも手まどひして、まことにすべきかたなければ、いみじきちかごとどもをたてて、祈申て、「今より後はかかる事、更に更にすべからず」など神もいへば、「さらばよしよし。今より後はかかる事なせそ」といひふくめてゆるしつ。さて、それよりのちは、すべて人をいけにゑにせずなりにけり。 |
さて、その男、家に帰ていみじう男女あひ思て、年比の妻夫に成てすぐしけり。男はもとよりゆへありける人のすゑなりければ、くちおしからぬさまにて侍りけり。 | さて、その男、家に帰ていみじう男女あひ思て、年比の妻夫に成てすぐしけり。男はもとよりゆへありける人のすゑなりければ、くちおしからぬさまにて侍りけり。 | ||
- | そののちは、かの国に猪、鹿をなん生贄にし侍りけるとぞ。 | + | その後は、かの国に猪、鹿をなん生贄にし侍りけるとぞ。 |
text/yomeiuji/uji119.txt · 最終更新: 2019/03/15 02:56 by Satoshi Nakagawa