ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:yomeiuji:uji070

差分

この文書の現在のバージョンと選択したバージョンの差分を表示します。

この比較画面にリンクする

両方とも前のリビジョン 前のリビジョン
text:yomeiuji:uji070 [2015/02/22 21:00]
Satoshi Nakagawa [第70話(巻5・第1話)四宮河原の地蔵の事]
text:yomeiuji:uji070 [2018/03/26 14:23] (現在)
Satoshi Nakagawa
ライン 6: ライン 6:
 **四宮河原の地蔵の事** **四宮河原の地蔵の事**
  
-これもいまはむかし、山科の道づらに、四宮かはらといふ所にて袖くらべといふ、商人あつまる所あり。その辺に下すのありける。地蔵菩薩を一体つくりたてまつりたりけるを、開眼もせで櫃にうち入て、おくの部屋などおぼしき所におさめをきて、世のいとなみにまぎれて、程へにければ、忘にけるほどに、三四年斗過にけり。+===== 校訂本文 =====
  
-ある夜夢に、大路をすぐるもののゑたかに人よぶ声のしけ「な事ぞ」ときけば「地蔵こそ、地蔵こそ」たかくこの家の前にていふなればおくかたよ、「何事ぞ」といらふこゑす也「明日、天帝尺の地蔵会しまふにはまいら給はぬか」といへば此小家内よりいらんと思へも、まだ目のあかねば、えまいまじきなり」といへば「構てまいり給へ」といへ、「目もみえねば、いでかまいらん」といふ声す也+これも今は昔山科の道づらに、四宮河原いふ所にて、袖比べといふ、商人集まる所あり。そ辺に下種(げす)のある。地蔵菩薩を一体造り奉りりけるを開眼も櫃(ひつ)にうち入れて、奥部屋などおぼしき所に納め置きて世の営みにぎれて、ほ経にければ、忘れにけほどに三・四年ばかり過ぎにけり
  
-うちおどろきて「なにのかくは夢にみえつか」とおもひまはすにあやしくて夜明ておくのかたをよくよくみれば、此地蔵をおさめてをきてまつたりけるを思いでてだしたりけり。+ある夜、夢に、大路を過ぐ者の、声高(こゑた)に人呼ぶ声のしければ、「何ごとぞ」と聞けば「地蔵こそ地蔵こそ」と、高家の前にて言ふなれば、奥の方(か)より、「何ごとぞ」とらふる声すなり。
  
-「これがえ給にこそ」とおろきおもひていそ開眼したてまつりけるとなん+「明日、天帝釈の地蔵会し給ふには、参らせ給はぬか」と言へば、この小家の内より、「参らんと思へども、まだ目の開かねば、え参るまじきなり」と言へば、「かまへて参り給へ」と言へば、「目も見えねば、いかでか参らん」と言ふ声すなり。 
 + 
 +うちおどろきて、「何の、かくは夢に見えつるにか」と思ひまはすに、あやしくて、夜明て、奥の方をよくよく見れば、この地蔵を納めて置き奉りたりけるを思ひ出でて、見出だしたりけり。 
 + 
 +「これがえ給にこそ」と、驚き思ひて、急ぎ開眼し奉りけるとなん。 
 + 
 +===== 翻刻 ===== 
 + 
 +  これもいまはむかし山科の道つらに四宮かはらといふ所にて 
 +  袖くらへといふ商人あつまる所ありその辺に下すのありける 
 +  地蔵菩薩を一体つくりたてまつりたりけるを開眼もせて櫃に/73ウy150 
 + 
 +  うち入てくの部屋なとおほしき所におさめをきて世の 
 +  いとなみにまきれて程へにけれは忘にけるほとに三四年斗 
 +  過にけりある夜夢に大路をすくるもののこゑたかに人 
 +  よふ声のしけれはなに事そときけは地蔵こそ地蔵こそとたか 
 +  くこの家の前にていふなれはおくのかたより何事そといら 
 +  ふるこゑす也明日天帝尺の地蔵会したまふにはまいらせ給は 
 +  ぬかといへは此小家の内よりまいらんと思へともまた目のあかねは 
 +  えまいるましきなりといへは構てまいり給へといへは目もみえね 
 +  はいかてかまいらんといふ声す也うちおとろきてなにのかくは夢に 
 +  みえつるにかとおもひまはすにあやしく夜明ておくのかたを 
 +  よくよくみれは此地蔵をおさめてをきたてまつりたりけるを思 
 +  ​てて見いたしたりけりこれかみえ給にことおとろきおもひて 
 +  いそき開眼したてまつりけるとなん/74オy151
  


text/yomeiuji/uji070.txt · 最終更新: 2018/03/26 14:23 by Satoshi Nakagawa