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text:yomeiuji:uji069

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text:yomeiuji:uji069 [2014/10/05 17:34]
Satoshi Nakagawa
text:yomeiuji:uji069 [2018/03/26 14:05] (現在)
Satoshi Nakagawa
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 宇治拾遺物語 宇治拾遺物語
-====== 第69話(巻4・第17話)慈恵僧正、戒壇築たる事 ======+====== 第69話(巻4・第17話)慈恵僧正、戒壇築たる事 ======
  
 **慈恵僧正戒壇築タル事** **慈恵僧正戒壇築タル事**
  
-**慈恵僧正、戒壇築たる事**+**慈恵僧正、戒壇築たる事**
  
-これも今はむかし、慈恵僧正は近江国浅井郡の人也。叡山の戒壇を、人夫かなはざりければ、えつかざりける比、浅井の郡司は、したしきうへに師壇にて仏事を修する間、此僧正を請じたてまつりて、僧膳の料に前にて大豆をいりて酢をかけけるを、「なにしに酢をばかくるぞ」ととはれければ、郡司いはく、「あたたかなる時、酢をかけつれば、すむつがりとて、にがみてよくはさまるるなり。しからざれば、すべりてはさまれぬなり」といふ。+===== 校訂本文 =====
  
-僧正のいく、「いかなりともなじははさまぬやうはあるべき。げやるとも、さみくひてん」とありければ、「いかでか、さるべき」とらがけり。僧正、「勝申な、こと事はあべからず。戒壇を築てたまへ」とありければ、「やすき事」とて、いりまめをげや一間のきて、居給て、一度もおとさずはされけり。みるものあさ事なし+これも今は昔、慈恵僧正((良源))近江国浅井郡の人なり。叡山の戒壇を人夫かなはりければ、え築(つ)ざりけるころ浅井の郡司は親しき上に、師壇にて仏を修するあひだ、この僧正を請じ奉りて、僧膳の料に、前にて大豆を炒りて酢をかけけるを、「何しに酢をかく」と問はれければ、郡司いはく、「温かなる酢をかけつれ、すむつがて、にがみて、よく挟るるなり。しからざれば滑りて挟れぬなり」ふ。
  
-柚のさねの、ただいましぼだしたるを、ぜてげやりたりけるをぞ、はさすべらかし給たりけれど、おとしもたてず、やがて又はさみとめ給ける+僧正のいはく、「いかなりとも、なじかは、挟まぬやうはあるべき。投げやるとも、挟み食ひてん」とありければ、「いかでか、さることあるべき」とあらがひけり。 
 + 
 +僧正、「勝ち申なば、異事(ことごと)はあるべからず。戒壇を築きて賜へ」とありければ、「やすきこと」とて、炒り豆を投げやるに、一間ばかり退(の)きて居給ひて、一度も落さず挟まれけり。見る者、あさまずといふことなし。 
 + 
 +柚の実(さね)の、ただ今絞だしたるを、ぜてげやりたりけるをぞ、らかし給たりけれど、しもたてず、やがてまた挟みとどめ給ひける。 
 + 
 +郡司、一家広き者なれば、人数をおこして、不日に戒壇を築きてけりとぞ。 
 + 
 +===== 翻刻 ===== 
 + 
 +  これも今はむかし慈恵僧正は近江国浅井郡の人也叡山 
 +  の戒壇を人夫かなはさりけれはえつかさりける比浅井の郡司は 
 +  したしきうへに師壇にて仏事を修する間此僧正を請し 
 +  たてまつりて僧膳の料に前にて大豆をいりて酢をかけける 
 +  をなにしに酢をはかくるそととはれけれは郡司いはくあたた 
 +  かなる時酢をかけつれはすむつかりとてにかみてよくはさまるる/73オy149 
 + 
 +  なりしからされはすへりてはさまれぬなりといふ僧正のいはく 
 +  いかなりともなしかははさまぬやうはあるへきなけやるともはさみ 
 +  くひてんとありけれはいかてかさる事あるへきとあらかひけり 
 +  僧正勝申なはこと事はあるへからす戒壇を築てたまへと 
 +  ありけれはやすき事とていりまめをなけやるに一間はかり 
 +  のきて居給て一度もおとさすはさまれけりみるものあさま 
 +  すといふ事なし柚のさねのたたいましほりいたしたるをませて 
 +  なけやりたりけるをそはさみすへらかし給たりけれとおとし 
 +  もたてすやかて又はさみとめ給ける郡司一家ひろきもの 
 +  なれは人数をおこして不日に戒壇を築てけりとそ/73ウy150
  
-郡司一家ひろきものなれば、人数をおこして、不日に戒壇を築てけりとぞ。 


text/yomeiuji/uji069.txt · 最終更新: 2018/03/26 14:05 by Satoshi Nakagawa