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--- text:uchigiki:uchigiki07 [2018/04/30 15:35] – 作成 Satoshi Nakagawa
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 ===== 翻刻 =====
-  昔七十にあまれは他国へ人を流やる国に有けりそれに一人大臣老母をもたり朝夕に見て
+  昔七十ニアマレハ他国ヘ人ヲ流ヤル国ニ有ケリソレニ一人大臣老母ヲモタリ朝夕ニ見テ
-  孝□しけりかうする間に七十にあまりにたり朝に見て夕□不見程たに不審たへかたう／d17
+  孝□シケリカウスル間ニ七十ニアマリニタリ朝ニ見テ夕□不見程タニ不審タヘカタウ／d17
 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1192812/17
-  をほゆるに倍て玄かなる国にに流れはいとかなしき事也と思て土室を掘て家の角に
+  ヲホユルニ倍テ玄カナル国ニニ流レハイトカナシキ事也ト思テ土室ヲ掘テ家ノ角ニ
-  隠居つ屋の人にたに殊に不知すかくて年ふるほとに隣の国より同様なる馬を二疋
+  隠居ツ屋ノ人ニタニ殊ニ不知スカクテ年フルホトニ隣ノ国ヨリ同様ナル馬ヲ二疋
-  ゐて来て此か祖子定よさらすは兵(いくさ)起て七日内国をほろほさむと云たる時に王(みか)と
+  ヰテ来テ此カ祖子定ヨサラスハ兵(イクサ)起テ七日内国ヲホロホサムト云タル時ニ王(ミカ)ト
-  大臣を召てかかる事なむ有るいかに定へきそ思て申と仰給ふ時大臣つふと申
+  大臣ヲ召テカカル事ナム有ルイカニ定ヘキソ思テ申ト仰給フ時大臣ツフト申
-  へき事にも不候さなり罷出てて能思めくらかして申候はむと云心には隠をきたる
+  ヘキ事ニモ不候サナリ罷出テテ能思メクラカシテ申候ハムト云心ニハ隠ヲキタル
-  祖の□老ははかむなう聞をきたる事や有と心にくくおほゆれは先いきていひ合むと思て
+  祖ノ□老ハハカムナウ聞ヲキタル事ヤ有ト心ニククオホユレハ先イキテイヒ合ムト思テ
-  里へ出ぬしのひて祖の室にまうててかかる事こそあれいかかせむする若聞き給ひたる事やある
+  里ヘ出ヌシノヒテ祖ノ室ニマウテテカカル事コソアレイカカセムスル若聞キ給ヒタル事ヤアル
-  と云ふ祖答て云「はやう若(わかかり)しをりかうやうの事云ひき其云様は同様なる馬祖を
+  ト云フ祖答テ云「ハヤウ若(ワカカリ)シヲリカウヤウノ事云ヒキ其云様ハ同様ナル馬祖ヲ
-  定は草を中にをきてをほきて食を子とは知へし任て食をは祖と知へしなとやうに
+  定ハ草ヲ中ニヲキテヲホキテ食ヲ子トハ知ヘシ任テ食ヲハ祖ト知ヘシナトヤウニ
-  こそききしかさやうに奏給と云を聞て内に参て御前に候は何そ彼馬事はと
+  コソキキシカサヤウニ奏給ト云ヲ聞テ内ニ参テ御前ニ候ハ何ソ彼馬事ハト
-  仰給かうやうになむ思えて候ふいかなるへき事にかと申す王けにさも云はれたりと仰給て
+  仰給カウヤウニナム思エテ候フイカナルヘキ事ニカト申ス王ケニサモ云ハレタリト仰給テ
-  御前に二馬を召て二の中に草を持(おかる)尓時にけに一疋馬はおほき食つ一疋の馬は
+  御前ニ二馬ヲ召テ二ノ中ニ草ヲ持(オカル)尓時ニケニ一疋馬ハオホキ食ツ一疋ノ馬ハ
-  □か食すてたるを後食其時にをほくくふを子□札(ふた)付今一疋には祖と札を付て
+  □カ食ステタルヲ後食其時ニヲホククフヲ子□札(フタ)付今一疋ニハ祖ト札ヲ付テ
-  遣しつ又同様に刊(けつり)たる木漆(うるし)ぬりたるを本末定てとて又進り同大臣を召てかかる
+  遣シツ又同様ニ刊(ケツリ)タル木漆(ウルシ)ヌリタルヲ本末定テトテ又進リ同大臣ヲ召テカカル
-  事なむ有と仰られけれは又如前申出母の本にいきて又かかる事なむあるなと申けれは
+  事ナム有ト仰ラレケレハ又如前申出母ノ本ニイキテ又カカル事ナムアルナト申ケレハ
-  □の云様それはいと安し水に浮て見に少し沈(しつむ)方有む其沈方を本として知へきなりと／d18
+  □ノ云様ソレハイト安シ水ニ浮テ見ニ少シ沈(シツム)方有ム其沈方ヲ本トシテ知ヘキナリト／d18
 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1192812/18
-  □ひけれはかくなむ思得と申けれは申ままに水に入て御覧するに小沈たる方あり其方をは
+  □ヒケレハカクナム思得ト申ケレハ申ママニ水ニ入テ御覧スルニ小沈タル方アリ其方ヲハ
-  本と書付て遣つ又象を進てこれか重の数すかそへて進と申たれはかうの□□□みし
+  本ト書付テ遣ツ又象ヲ進テコレカ重ノ数スカソヘテ進ト申タレハカウノ□□□ミシ
-  きわさかなと思して又大臣手まとひして召此度はいみしき事ありとえ思得しとおほし
+  キワサカナト思シテ又大臣手マトヒシテ召此度ハイミシキ事アリトエ思得シトオホシ
-  食て何せむする今度は更にえ思ゆましき事なと仰らる大臣けにささ候事な□りさりと
+  食テ何セムスル今度ハ更ニエ思ユマシキ事ナト仰ラル大臣ケニササ候事ナ□リサリト
-  罷出て思めくらかして申候はむと申てまかてぬ王の思食様我前にても思得つへきに
+  罷出テ思メクラカシテ申候ハムト申テマカテヌ王ノ思食様我前ニテモ思得ツヘキニ
-  かく里に出つつ思得てくるは心不得事かないかなる事にかと思食す大臣と許ありて帰
+  カク里ニ出ツツ思得テクルハ心不得事カナイカナル事ニカト思食ス大臣ト許アリテ帰
-  参ぬこれはしも思得かたくやあらむと思食て何そと問ひ給ふ大臣の申様象を船に乗つ
+  参ヌコレハシモ思得カタクヤアラムト思食テ何ソト問ヒ給フ大臣ノ申様象ヲ船ニ乗ツ
-  沈む程に水つきはに墨かきつさて後に象ををろして次に船に石を乗つ象乗て書る
+  沈ム程ニ水ツキハニ墨カキツサテ後ニ象ヲヲロシテ次ニ船ニ石ヲ乗ツ象乗テ書ル
-  墨のもとに水至其時に石を秤(はかり)に懸つつ量る其後に石数をかそへて惣数たる
+  墨ノモトニ水至其時ニ石ヲ秤(ハカリ)ニ懸ツツ量ル其後ニ石数ヲカソヘテ惣数タル
-  数を以て象重さにかそへあてて象重さそこらそ有と云ことは知ぬさて後象重さ
+  数ヲ以テ象重サニカソヘアテテ象重サソコラソ有ト云コトハ知ヌサテ後象重サ
-  いくらなむ有と書て帰し遣るあたの国に知り難き三の物を能一事ならす云ひ
+  イクラナム有ト書テ帰シ遣ルアタノ国ニ知リ難キ三ノ物ヲ能一事ナラス云ヒ
-  をこせたれは尓時にいみしくほめ感す賢き人多りける国なりけりをほほけの上手は
+  ヲコセタレハ尓時ニイミシクホメ感ス賢キ人多リケル国ナリケリヲホホケノ上手ハ
-  知るへくも非ぬ事をかくのみいひあててをこする事賢こかりける国にあた(㤪)の心を発ては返て
+  知ルヘクモ非ヌ事ヲカクノミイヒアテテヲコスル事賢コカリケル国ニアタ(㤪)ノ心ヲ発テハ返テ
-  打得れなむされは随て中か吉るへきなり年来いとみつる心長失ぬさてその王(みか)と大臣
+  打得レナムサレハ随テ中カ吉ルヘキナリ年来イトミツル心長失ヌサテソノ王(ミカ)ト大臣
-  を召ていかてかかる事は知たるそ此国ににはちをみせすあた(㤪)の国をも和けるつは大まうち君の
+  ヲ召テイカテカカル事ハ知タルソ此国ニニハチヲミセスアタ(㤪)ノ国ヲモ和ケルツハ大マウチ君ノ
-  たはかりによりある事なれはいみしううれしうなむ思尓時に大臣目よりなみたのこほるる／d19
+  タハカリニヨリアル事ナレハイミシウウレシウナム思尓時ニ大臣目ヨリナミタノコホルル／d19
 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1192812/19
-  を表衣の衿てしてかいのこひ鼻うちかみて申くいにしへより此国には七十に余(あまれ)は
+  ヲ表衣ノ衿テシテカイノコヒ鼻ウチカミテ申クイニシヘヨリ此国ニハ七十ニ余(アマレ)ハ
-  他国にに流(なかし)つかはす事沙汰に入れる事也今始たる事にも非すしかるををのれか母七十
+  他国ニニ流(ナカシ)ツカハス事沙汰ニ入レル事也今始タル事ニモ非スシカルヲヲノレカ母七十
-  にあまりて今年八年朝夕の孝を送らむかために屋の内に室を造て候也年
+  ニアマリテ今年八年朝夕ノ孝ヲ送ラムカタメニ屋ノ内ニ室ヲ造テ候也年
-  老る物は聞き広う候は若聞たる事やあると罷出つつ問候つるなり此老人候さら
+  老ル物ハ聞キ広ウ候ハ若聞タル事ヤアルト罷出ツツ問候ツルナリ此老人候サラ
-  ましかはと申時に王と仰給様いかなる事によりて昔より老人を捨る事あらむ今これに
+  マシカハト申時ニ王ト仰給様イカナル事ニヨリテ昔ヨリ老人ヲ捨ル事アラム今コレニ
-  よりて事の心を思ふに老を貴むへき国にこそありけれ然は遠国に遣はして老者共を殊に
+  ヨリテ事ノ心ヲ思フニ老ヲ貴ムヘキ国ニコソアリケレ然ハ遠国ニ遣ハシテ老者共ヲ殊ニ
-  女上中下早(とく)召に遣はすへき宣旨下すへし又老人と捨と云ふ国の名をは捨て養老
+  女上中下早(トク)召ニ遣ハスヘキ宣旨下スヘシ又老人ト捨ト云フ国ノ名ヲハ捨テ養老
-  国と付へし此れより後ち国の政り事と平かに也にけり／d20
+  国ト付ヘシ此レヨリ後チ国ノ政リ事ト平カニ也ニケリ／d20
 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1192812/20