text:jikkinsho:s_jikkinsho05-14
no way to compare when less than two revisions
差分
このページの2つのバージョン間の差分を表示します。
— | text:jikkinsho:s_jikkinsho05-14 [2015/12/09 21:54] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa | ||
---|---|---|---|
行 1: | 行 1: | ||
+ | 十訓抄 第五 朋友を撰ぶべき事 | ||
+ | ====== 5の14 卓王孫が娘に卓文君と聞し人家富みければ・・・ ====== | ||
+ | |||
+ | ===== 校訂本文 ===== | ||
+ | |||
+ | 卓王孫が娘に、卓文君と聞し人、家富みければ、もてなし、ありさま、ことなりける上、姿、人にすぐれたりけり。眉は遠山をうつし、胸は玉かとぞ見えける。 | ||
+ | |||
+ | 時に、司馬相如といひける男、身は貧なりけれども才に富めり。琴をもよく弾きけり。文君、これにめでて、かの男にあひにけるを、父母、いさむれども聞き入れず。 | ||
+ | |||
+ | 相如が貧家に行きて世を渡るあひだ、父、文君がゆくえを知らざりけるほどに、相如、つひに世に仕へて文園令となりて、いみじかりければ、父、娘の咎(とが)をゆるしてけり。 | ||
+ | |||
+ | これまた数寄の道なれば、一筋に定めがたし。 | ||
+ | |||
+ | 惟喬親王「聴弾琴詩」にいはく、 | ||
+ | |||
+ | 相如昔挑文君得 | ||
+ | |||
+ | 莫使簾中子細聴 | ||
+ | |||
+ | ある文にいはく、「妻は斉なり」。いふ心は、上一人より下庶人にいたるまで、夫の心に等しきがゆゑなり。その心、もし背く時は、家亡ぶといへり。 | ||
+ | |||
+ | されば、妻夫の中は、悪しきことをばともにいさめ、吉(よ)きことをば互ひに勧めて、この世には家を納むる徳を乱さず、後世には道を勧むる善知識なるべし。 | ||
+ | |||
+ | ===== 翻刻 ===== | ||
+ | |||
+ | 十三卓王孫ガ娘ニ卓文君ト聞シ人、家冨ケレハモテナ | ||
+ | シアリサマコトナリケル上姿人ニスクレタリケリ、 | ||
+ | 眉ハ遠山ヲウツシ胸ハ玉カトソミエケル、時ニ司馬 | ||
+ | 相如ト云ケル男、身ハ貧ナリケレトモ才ニトメリ、琴 | ||
+ | ヲモヨクヒキケリ、文君是ニメテテ彼男ニアヒニ | ||
+ | ケルヲ、父母イサムレトモ不聞入、相如カ貧家ニ行 | ||
+ | テ世ヲワタル間、父文君カユクエヲシラサリケル | ||
+ | ホトニ、相如遂ニ世ニ仕テ文園令トナリテイミシカ | ||
+ | リケレハ、父娘ノ咎ヲユルシテケリ、是又スキノ道 | ||
+ | ナレハ一筋ニ難定、惟高親王聴弾琴詩云/k20 | ||
+ | |||
+ | 相如昔挑文君得、 莫使簾中子細聴 | ||
+ | 或文云、妻ハ斉也、云心ハ上一人ヨリ下庶人ニ至マテ | ||
+ | 夫ノ心ニヒトシキカ故也、其心若背時ハ家亡ト云リ、 | ||
+ | 然ハ妻夫ノ中ハアシキ事ヲハ共ニイサメ、吉事 | ||
+ | ヲハタカヒニススメテ、此世ニハ家ヲ納ムル徳ヲ | ||
+ | 不乱、後世ニハ道ヲススムル善知識ナルヘシ、/k21 | ||
text/jikkinsho/s_jikkinsho05-14.txt · 最終更新: 2015/12/09 21:54 by Satoshi Nakagawa