text:chomonju:s_chomonju434
差分
このページの2つのバージョン間の差分を表示します。
次のリビジョン | 前のリビジョン | ||
text:chomonju:s_chomonju434 [2020/06/23 23:00] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:chomonju:s_chomonju434 [2021/11/21 13:07] (現在) – [翻刻] Satoshi Nakagawa | ||
---|---|---|---|
行 6: | 行 6: | ||
中納言兼光卿((藤原兼光))、建久二年十二月二十八日に検非違使別当になりて、庁務ことにおこし、沙汰ありけるに、賤しき者の小屋に、小さき釜の失せたりけるを、隣なりける腰居(こしゐ)が盗みたる嫌疑ありて、贓物(ざうもつ)を探し出だしたりけるに、腰居申しけるは、「手をもちてこそゐざり歩(あり)き候へ。手を離れては、いかでか取り侍るべき。他人ぞ盗みて置きて侍らん」と陳じければ、「まことに申すところ理なり」と沙汰ありけれど、盗まれたる者の訴訟強くて、大理の門前に召し出だして内問ありけり。 | 中納言兼光卿((藤原兼光))、建久二年十二月二十八日に検非違使別当になりて、庁務ことにおこし、沙汰ありけるに、賤しき者の小屋に、小さき釜の失せたりけるを、隣なりける腰居(こしゐ)が盗みたる嫌疑ありて、贓物(ざうもつ)を探し出だしたりけるに、腰居申しけるは、「手をもちてこそゐざり歩(あり)き候へ。手を離れては、いかでか取り侍るべき。他人ぞ盗みて置きて侍らん」と陳じければ、「まことに申すところ理なり」と沙汰ありけれど、盗まれたる者の訴訟強くて、大理の門前に召し出だして内問ありけり。 | ||
- | 相論ことゆかざりけるに、別当はかりごとをめぐらして、「この腰居、申すところ不便(ふびん)なり。ただこの釜をば、腰居に取らすべし」と仰せ下したりければ、腰居喜びて、頭(かしら)にうちかづきて、いざり出でけるを見て、「実犯(じつぽん)なりけり。かたはの身なれども、かくして盗みてけり」と悟りて、科(とが)に行なはれけり。 | + | 相論ことゆかざりけるに、別当はかりごとをめぐらして、「この腰居、申すところ不便(ふびん)なり。ただこの釜をば、腰居に取らすべし」と仰せ下したりければ、腰居喜びて、頭(かしら)にうちかづきて、ゐざり出でけるを見て、「実犯(じつぽん)なりけり。かたはの身なれども、かくして盗みてけり」と悟りて、科(とが)に行なはれけり。 |
ゆゆしかりけるはかりごとなり。 | ゆゆしかりけるはかりごとなり。 | ||
行 24: | 行 24: | ||
訴訟つよくて大理の門前にめし出して内問あり | 訴訟つよくて大理の門前にめし出して内問あり | ||
けり相論事ゆかさりけるに別当はかりことを | けり相論事ゆかさりけるに別当はかりことを | ||
- | めくらしてこの腰居【申所不便なりたた此釜を | + | めくらしてこの腰居申所不便なりたた此釜を |
- | は腰居】にとらすへしと仰下したりけれは | + | は腰居にとらすへしと仰下したりけれは |
腰居よろこひてかしらにうちかつきていさりい | 腰居よろこひてかしらにうちかつきていさりい | ||
てけるをみて実犯なりけりかたはの身なれと | てけるをみて実犯なりけりかたはの身なれと |
text/chomonju/s_chomonju434.txt · 最終更新: 2021/11/21 13:07 by Satoshi Nakagawa