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text:chomonju:s_chomonju402 [2020/05/21 18:37]
Satoshi Nakagawa 作成
text:chomonju:s_chomonju402 [2020/05/21 18:41] (現在)
Satoshi Nakagawa [校訂本文]
ライン 6: ライン 6:
 順徳院((順徳天皇))の御位の時、新しき御琵琶のありけるを、「いかなる名をか付くべき」とて、蔵人孝時((藤原孝時))に風俗・催馬楽の名、ならびにその歌の詞(ことば)の中に、さもありぬべからん注(しる)し申すべきよし、勅定ありければ、すなはち注進しけり。その中、大鳥を入れたりけるを、「これにてこそあらめ」とて、その名に定まりにけり。 順徳院((順徳天皇))の御位の時、新しき御琵琶のありけるを、「いかなる名をか付くべき」とて、蔵人孝時((藤原孝時))に風俗・催馬楽の名、ならびにその歌の詞(ことば)の中に、さもありぬべからん注(しる)し申すべきよし、勅定ありければ、すなはち注進しけり。その中、大鳥を入れたりけるを、「これにてこそあらめ」とて、その名に定まりにけり。
  
-さて、撥面(ばちめん)の絵に描かれんとしける時、「そもそもこの鳥((「鳥」は底本「馬」。諸本により訂正。))の姿はいかなるものぞ。誰か知りたる」と御尋ねありけるに、申す人なかりけるに、源大納言通具卿、「絵様(ゑやう)候ふ」とて奉りたりけり。ひえ鳥の色したる鳥の、目・觜(くちばし)など恐しげなるが、太短(ふとみじか)なる姿なるを書きて参らせたりけり。御覧じて、「これは何に見えたるぞ。古く書きたる本のあるか。また、この定(ぢやう)なると注(しる)したる物のあるか」と御尋ねあるに、大納言、つまびらかに申す旨なし。ただ、「わがもとに古くより写し持ちて候ふ」とばかり申されけり。「さてはそのこと正体なし。この人は推しごとする人にこそ」と沙汰ありて、用ゐられずなりにけり。+さて、撥面(ばちめん)の絵に描かれんとしける時、「そもそもこの鳥((「鳥」は底本「馬」。諸本により訂正。))の姿はいかなるものぞ。誰か知りたる」と御尋ねありけるに、申す人なかりけるに、源大納言通具卿((源通具))、「絵様(ゑやう)候ふ」とて奉りたりけり。ひえ鳥の色したる鳥の、目・觜(くちばし)など恐しげなるが、太短(ふとみじか)なる姿なるを書きて参らせたりけり。御覧じて、「これは何に見えたるぞ。古く書きたる本のあるか。また、この定(ぢやう)なると注(しる)したる物のあるか」と御尋ねあるに、大納言、つまびらかに申す旨なし。ただ、「わがもとに古くより写し持ちて候ふ」とばかり申されけり。「さてはそのこと正体なし。この人は推しごとする人にこそ」と沙汰ありて、用ゐられずなりにけり。
  
 さて、孝道朝臣((藤原孝道))に御尋ねありければ、「風俗に歌ひて候ふやうは、『大鳥の羽に霜降れり』と候はば、もし鵠(くぐひ)などにてや候はんとぞ推(すい)せられて候ふ。さらでは口伝も候はず。ただ歌の言葉にて推(すい)し申すばかりにて候ふ」と申しければ、「このことさもあり」とて、鵠を描かれたるとぞ。 さて、孝道朝臣((藤原孝道))に御尋ねありければ、「風俗に歌ひて候ふやうは、『大鳥の羽に霜降れり』と候はば、もし鵠(くぐひ)などにてや候はんとぞ推(すい)せられて候ふ。さらでは口伝も候はず。ただ歌の言葉にて推(すい)し申すばかりにて候ふ」と申しければ、「このことさもあり」とて、鵠を描かれたるとぞ。


text/chomonju/s_chomonju402.txt · 最終更新: 2020/05/21 18:41 by Satoshi Nakagawa