text:chomonju:s_chomonju265
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text:chomonju:s_chomonju265 [2020/04/03 22:03] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:chomonju:s_chomonju265 [2020/04/03 22:04] – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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その時、「琵琶の手は聞かせ給ひぬ。箏の調子はいかに。これほど好かせ給ひたれば、心おちて弾きて聞かせ奉らん」とて、三段の上りかき合はせ、並びに梅花といふ撥合(ばちあはせ)など弾きて聞かせければ、掌(たなごころ)を合はせておもしろがりけり。 | その時、「琵琶の手は聞かせ給ひぬ。箏の調子はいかに。これほど好かせ給ひたれば、心おちて弾きて聞かせ奉らん」とて、三段の上りかき合はせ、並びに梅花といふ撥合(ばちあはせ)など弾きて聞かせければ、掌(たなごころ)を合はせておもしろがりけり。 | ||
- | かくするほどに、夜すでに明けて、壁の崩れより日影のさし入りたる穴より、犬の鼻を吹きて内を嗅ぎけるを((「嗅ぎけるを」は底本「かきける候を」。諸本により訂正。))、この病者見て、肩をすゑ、顔の色変り、恐れおののきたる気色なり。 | + | かくするほどに、夜すでに明けて、壁の崩れより日影のさし入りたる穴より、犬の鼻を吹きて内を嗅ぎけるを((「嗅ぎけるを」は底本「かきける候を」。諸本により訂正。))、この病者見て、肩をすゑ、顔の色変はり、恐れおののきたる気色なり。 |
ここに、かの福天神の所為(しよゐ)と悟りて、犬を追ひのけつ。その後、気色なほりてけり。「今は心ゆきぬらん。まかり帰らん。見参に入り候ひぬる、嬉しく候ふ。御社へも参りて、物の音(ね)あまたそろへて、楽(がく)して聞かせ参らすべし」と言へば、「昔、常に承ることにて、その御名残なつかしく候ひて、恐れながら申して候ひつるなり」とぞのたまひける。さて、馬の助帰りぬ。 | ここに、かの福天神の所為(しよゐ)と悟りて、犬を追ひのけつ。その後、気色なほりてけり。「今は心ゆきぬらん。まかり帰らん。見参に入り候ひぬる、嬉しく候ふ。御社へも参りて、物の音(ね)あまたそろへて、楽(がく)して聞かせ参らすべし」と言へば、「昔、常に承ることにて、その御名残なつかしく候ひて、恐れながら申して候ひつるなり」とぞのたまひける。さて、馬の助帰りぬ。 |
text/chomonju/s_chomonju265.txt · 最終更新: 2020/06/20 23:40 by Satoshi Nakagawa