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text:chomonju:s_chomonju023 [2015/03/09 02:54] – 作成 Satoshi Nakagawatext:chomonju:s_chomonju023 [2015/03/09 02:55] – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
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 興福寺の僧の、いまだ僧綱(そうがう)などには上らざりけるが、学生にては侍りけれども、いと貧しかりければ、春日社に参りて申しけれども、そのしるしもなかりければ、寺のまじらひも思ひ絶えて、八幡に詣でて、七日籠りて祈念しけるに、ある夜、夢にゆゆしげなる客人の参り給へりけるに、大菩薩、御対面あるよしなり。 興福寺の僧の、いまだ僧綱(そうがう)などには上らざりけるが、学生にては侍りけれども、いと貧しかりければ、春日社に参りて申しけれども、そのしるしもなかりければ、寺のまじらひも思ひ絶えて、八幡に詣でて、七日籠りて祈念しけるに、ある夜、夢にゆゆしげなる客人の参り給へりけるに、大菩薩、御対面あるよしなり。
  
-客人、「某と申す僧や籠りて候ふ」と申し給ひければ、「さる事は、」と答へ申させ給ひけり。また客人のたまはく、件((「件」は底本「仲」。諸本により訂正。))の僧、年ごろ我を憑(たの)みて、朝夕責め候ひつれども、今度必ず出離すべき者なり。もし、『楽しみに誇りなば、いかが』と思ひ候へば、ひかへて侍り。御許しあるまじく候ふ」と申させ給ひけり。この僧、この事を聞きて、「この客人は誰にて渡らせ給ふぞ」と、人に尋ねければ、「春日大明神の御渡りなり」と答へけり。+客人、「某と申す僧や籠りて候ふ」と申し給ひければ、「さる事は、」と答へ申させ給ひけり。また客人のたまはく、件((「件」は底本「仲」。諸本により訂正。))の僧、年ごろ我を憑(たの)みて、朝夕責め候ひつれども、今度必ず出離すべき者なり。もし、『楽しみに誇りなば、いかが』と思ひ候へば、ひかへて侍り。御許しあるまじく候ふ」と申させ給ひけり。この僧、この事を聞きて、「この客人は誰にて渡らせ給ふぞ」と、人に尋ねければ、「春日大明神の御渡りなり」と答へけり。
  
 さて、夢覚めぬれば、今生の結縁も嬉しく、来世の得脱も頼もしくて、泣く泣く本寺に帰りて、他事なく後世のつとめを励みて、つひに往生を遂げにけり。 さて、夢覚めぬれば、今生の結縁も嬉しく、来世の得脱も頼もしくて、泣く泣く本寺に帰りて、他事なく後世のつとめを励みて、つひに往生を遂げにけり。
text/chomonju/s_chomonju023.txt · 最終更新: 2020/01/14 13:11 by Satoshi Nakagawa