大和物語
かくて1)、九の君2)の侍従の君3)にあはせ奉り給ひてけり。
同じころ、御息所4)を、宮5)、おはしまさずなりにければ6)、左の大臣(おとど)7)の、右衛門の督におはしけるころ、御文奉り給ひけり。
「この君、婿取られ給ひにけり」と聞き給ひて、大臣(おとど)の、御息所に、
波の立つかたも知らねどわたつうみのうらやましくも思ほゆるかな
かくて九の君のししうの君にあはせ たてまつり給ひてけり同ころみやす所を みやおはしまさすなりにけれは左の おととの右衛門の督におはしけるころ御 ふみたてまつり給けりこのきみむこ とられたまひにけりときき給ておとと のみやすところに/d48r
なみのたつかたもしらねとわたつ うみのうらやましくもおもほゆるかな/d48l