古今著聞集 画図第十六
同じ御時1)、似絵(にせゑ)を御好みありけるに、北面・下臈・御随身などの2)影を、左京権大夫信実朝臣3)を召して描かせられけるに、大夫尉永親4)そのやうとも知らで、なへらかなる白襖(しらあを)着て、北面に候ひけるが、召し出だされける時、太刀をとりてはきて参りたりける。いみじうなん見え侍りける。
同御時似絵を御好ありけるに北面下臈御随身なと 影を左京権大夫信実朝臣をめしてかかせられ けるに大夫尉永親その様ともしらてなへらかなる 白襖きて北面に候けるかめし出されける時太刀をとり てはきてまいりたりけるいみしうなんみえ侍ける/s304l