古今著聞集 和歌第六
同じ卿1)、左衛門督にて侍りける時、家に歌合し侍りけるに、頼政朝臣2)、立春の歌に、
めづらしき春にいつしかうちとけてまづもの言ふは雪の下水
と詠み侍りけるがおもしろく聞こえければ、またの朝、亭主、かの朝臣のもとへ申しつかはしける、
さもこそは雪の下水うちとけめ人には越えて見えし波かな
同卿左衛門督にて侍ける時家に哥合し侍けるに頼政朝臣 立春哥に めつらしき春にいつしかうちとけてまつものいふは雪の下水 とよみ侍けるかおもしろくきこえけれは又の朝亭主彼朝臣 のもとへ申つかはしける さもこそは雪の下水うちとけめ人にはこえてみえし浪かな/s149r