text:zotanshu:zotan05-05
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| text:zotanshu:zotan05-05 [2026/02/11 22:39] – Satoshi Nakagawa | text:zotanshu:zotan05-05 [2026/02/19 18:46] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa | ||
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| [[index.html|雑談集]] | [[index.html|雑談集]] | ||
| - | ====== 巻5第4話(39) 上人の事 ====== | + | ====== 巻5第5話(40) 呪願の事 ====== |
| ===== 校訂本文 ===== | ===== 校訂本文 ===== | ||
| - | [[zotan05-03|<< | + | [[zotan05-04|<< |
| - | 昔の上人は、大国は申すに及ばず、わが国の上代の上人のことこれを聞くに、名利(みやうり)深く厭(いと)ひ棄て、道行高く願ひ行ひき。まづ世を遁(のが)れたる形、名利心になかるべし。みな人ごと思ひ立ちながら、なほなほ棄て果てぬにや。大象尾にかかる夢に違(たが)はず。 | + | 華厳経・大集経等に、「物ごとに呪願(じゆぐわん)すべし」と見えたり。一巻さながら呪願の文あり。世間の人。行じてなれて、口に呪願の文を唱ふれども、その意(こころ)信解(しんげ)なければ、その徳も薄かるべし。思ひ入れて信心あらば、その徳大なるべし。 |
| - | 昔、漢朝(かんてう)に貴き聞こえありて、勅使を立て召されしに、山中に住して、官人のため礼儀せず、鼻より涕(しる)たる拭(のご)はず。官人、「わがため涕を拭へ」。答へて云はく、「何の暇(いとま)ありてか、俗人のため涕を拭はん。云々」。これ棄て果てたる形なり。 | + | 昔、三蔵法師、寺物(じもつ)を借用し、非法のことに用ひおはつて、償(つぐの)ひ返さんため、他国へ行いて観化((「勧化」の誤りか。))、持ち帰る路(みち)にて命終(みやうじゆう)す。寺物を返すといへども、不法に用ゐたるゆゑに地獄へ落つ。温室(をんしつ)に入るごとくに覚えて、呪願に云はく、「身体を沐浴、まさに願すべし。衆生身心垢なく、内外清浄ならん」。呪願によりて、地獄を出でて、了(おは)つて天に生ず。律蔵の中にこれあり。 |
| - | 高野の五智房((融源))は、覚鑁(かくばん)上人の弟子、知法の人と聞こえけり。乱行の名ありければ、灌頂(くわんぢやう)行ひて大阿闍梨(だいあじやり)にて列に立ちたるを、寺僧、「恥ぢがましきことあたへん」と支度(したく)しけるに、雨(あめふ)る日、笠を持たざるに、雨かからざりければ、人敬ふて、別のことなかりけりといへり。 | + | 慈童女長者、貧乏にして、一人の母を養ふ。薪を拾ひてこれを売り養ふに、不足の意(こころ)にて、海に入り宝を採り養はむために、母に暇(いとま)を乞ふに、母許さず。あひそふと思へるに、母が髪を一茎引き抜いて海へ行く。路に迷うて金銀瑠璃(こんごんるり)の城(じやう)に、数万歳快楽(まんざいけらく)し、その後(のち)地獄へ入る。獄率(ごくそつ)、火輪を戴(いただ)かしめて云はく、「なんぢ、薪を拾ひて母を養ふゆゑに、数万歳、その果報に楽を受く。今、母が髪を抜いて心に違(い)するゆゑに、この火輪を戴くべし、云々」。慈童女が云はく、「この地獄に受苦(じゆく)の人多きや」。答ふ、「数を知らず」。われ火輪を戴くこと幾年(いくとし)ぞや。答ふ、「なんぢがごときの人来たらん時、この火輪戴すべし」と。童女云はく、「もししからば、この地獄の衆生の苦、われ一人代はて受くべし」と云ふ時、火輪、地に落ちて、兜率天(とそつてん)に生まれき。 |
| - | 遁世の門に入りて、小庵に行きて籠居(ろうきよ)したるを、後白川の法皇((後白河法皇))の高野の御幸(ごかう・みゆき)のついでに召されけるに、「風気(ふうき)いぶせく候ふ」とて参ぜず。たびたび召すに参ぜず。さて、庵室へ御幸なりたるに、ほたたきて腰あぶりて、立ちも上がらで、「風気の候ふ」と申しければ、背を拝みて還御ありけりと云へり。 | + | 天台の師((智顗))、このことを釈し給ふには、「十界の果報、身(しん)は差別(しやべつ)せり。十界の心は無碍(むげ)にして、仏界の心を発(ほつ)せり」と釈し給へり。仏心、内(うち)に生じ、苦果、外(ほか)に滅するなり。これはただ呪願なり。言(ことば)、美(び)ならねども、心、まことの呪願あり。衆生の言(ことば)、みな衆生と共に仏法に入りて、二利円満の願なれば、いるかせに思ふべからず。纔(わづ)かにして、呪願の力、大なる益(やく)あるべし。 |
| - | 今の代には、かかる人もあらじ。拝ませ給ふ王もおはしますべしとも覚えず。 | + | 施物(せもつ)を得ては、ことに呪願すべし。心地観経の文(もん)、常の人これを知り、必ずこれ誦す。「能施所施(のうせしよせ)及び施物、三世の中において所得無ければ、われら最勝心に安住し、十方一切仏を供養せん」。華厳((華厳経))・大集((大集経))には大小便、手水(てうず)、剃刀(かみそり)にも、みな呪願の文これあり。ことに粥斎(しゆくさい)の呪願、僧衆忘るべからざるものなり。南山大師((道宣))の呪願の文、「この食色香人ごとにこれを知る。一切の食物に通じて呪願すべし」と見えたり。文、これかの大師の呪願の文なり。六通聞香(ろくつうもんかう)の句、殊勝なり。「念食食香、如栴檀風。一時普薫十。於食能生六波羅蜜及以三行。」(自行共行衆行也)。 |
| - | 和州三輪山、常観房の上人は、真言師、貴(たつと)き聞えありて、興福寺の時の別当請じ給ひければ、参じて小衣に足駄(あしだ)履きて参じて、罷り出でられける時、庭へ下りて送らせ給ひければ、「誰(た)が子にておはします」と問ひ申さるるに、「普賢寺入道((藤原基通・近衛基通))の子息にて侍り」と仰せられければ、「さては上郎にておはおはしましけるや」と申されける。今の代には、「尾籠(びろう)の上人なり」と沙汰あらまし。このことを感じて、「この御房はまことの上人なりけり。さすが、わがもとへ来たるほどの人、誰(たれ)と知らずやあるべき。貴し」と仰せられけりと云へり。 | + | 呪願は事によりて定まれる言(ことば)なし。ただ志を述べて祈念す。また一切に亘(わた)て、たがはぬこともあるべし。大方(おほかた)はその意(こころ)を得て言は用ゆべしと見えたり。 |
| - | 今の代の人は、名人の心のみありて、顛倒(てんたう)の心を恥ぢざるなり。されば、仏徳をかぶる人、世にまれにのみ聞え侍り。 | + | 本説は、呪願は上座の行ずべきことと見えたり。首座(しゆそ)の行ずるその儀か。あるいは維那(いの)これを行ず。上座は多くは長老、もしはその衆の中の上座なり。律の呪願、もつともこれを行ずべし。 |
| - | 故金剛王院の僧正実賢は、知法の人、智者にて、法愛の心深くして、いかなる者とも、野の中、路の辺にても、法門物語せられけると云へり。故金剛王院の厳海(ごんかい)僧正召し仕ひける承仕(じようじ)法師、老々たるが、韮畠(にらばたけ)作りける所にて、「故僧正御房は、いかなる承仕をか召し仕ひし」と問はれければ、かしこまりて、「ただ信ある者を召し仕はれ候ひし。『これ愚痴(ぐち)の者なれども、信のあれば召し仕ふなり』とて、理趣礼懺(りしゆらいさん)ばかり御許し候ひて、年久しく召し仕はれ候ひし。『なんぢは愚痴の者なれば、深き法門、まことしき義理、いかに云ふとも知るべからず。浅きことばかり教へむ。仏は無相の法身とて、悟り深き行者が、観念して深き利益あり。重々の機(き)に、分々の利益を施し給ふ。愚かなる者の、敬ふ心なくて、木石のごとく思へるには、ただ木石のごとし。益(やく)なし。おのれが智恵にては、深き観心はかなはじ。ただ仏を敬ひ畏れ慎しむこと、われほどに思へ』と仰せ候ひしかば、仏の御前にて香華(かうげ)をも参らせ候ふ。よろつ立振舞(たちふるまひ)候ひし心、僧正御前のごとく、ちとも違はず振舞ひ候ひしかば、その心ざまを御覧じて、信ある者に思はれ参らせて候ひしか」と申しければ、感涙を流して、「すでに学問したり」とて悦びて、一期(いちご)の間、折節衣物(いもつ)賜びてけり。 | + | 在世に、俗人、僧を請じ供養することありけり。天竺の作法、在家人始めて家を作るに、もしは喜びあり、憂へもあれば、祈祷し必ず僧を請ずる習ひと云へり。ある長者、僧を請じ供養しけるに、舎利弗(しやりほつ)時の上座にて呪願しける。彼の長者、国王より朝恩の大なることありけり。妻(さい・つまの)、産(さん)平安にして、男子生みてけり。商ひ、船安穏(あんおん)にして、宝(たから)多く得たり。かかる吉事(きちじ)、計会(けいくわい)せり。よつて呪願の詞(ことば)の中に、「常に今日のごとくめでたかるべし」と申したりければ、長者、悦びて加布施(かふせ)に白㲲(はくでう)等の物、多くしてけり。 |
| - | これほどの道理は人ごとに知りぬべし。僧正もいかが知り給はざらむなれども、「先達の口伝(くでん)、まことにさるべし」と感じ思はれける。常の人の心は。仏をば恥ぢず礼せず、檀那をば恥ぢへつらふ類(たぐひ)多し。かかる心にては、檀那の施(せ)は受くることありとも、仏の恩はありがたかるべし。これ顛倒の心なり。 | + | 僧の中に、愚痴(ぐち)なる僧、摩伽羅(まから)と云ふありけり。このこと見聞して、うらやましく思ひて、舎利弗に、「この呪願教ゆべし」と云ふ。「呪願は時に随(したが)ひて、定れる詞(ことば)なし」と云へども、懇望(こんばう)する間、やむことなくして書ひて与ふ。 |
| - | 仏に恭敬(くぎやう)の心なきは、昔、竜蛇(りゆうじや)の中より来たれるゆゑ、また彼の中に生ずべし。律の中に見えたり。仏前に参詣しては、必ず仏を礼すべし。華厳((華厳経))等の経に、五悔(ごけ)等の行、その徳委細なり。礼懺経(れいさんきやう)、もつとも明々なり。 | + | 摩伽羅、上座として僧を請じて供養する長者のもとにて呪願しけり。長者、国王より子細ありて重き罸(ばつ)ありけり。妻、難産して死におはんぬ。船破(わ)れて宝多く失せおはんぬ。かくのごとく愁へのことあるに、習ひ覚えたる文を誦(じゆ)して、「常に今日のごとくなるべし」と云ふ時、長者、嗔(いか)りて杖をもつてこれを打つ。 |
| - | 東福寺の開山((円爾弁円))も、夜中(やちう)に仏前において礼拝し、帰命本覚等(文)誦し給ひけると承る。この文は、天竺に破戒の僧千僧に入らずして、僧の数とも思はず、さりながら一人事欠けて、請じて供養するに、人みな破戒無懺なることを知りて、饍(ぜん)を持ちて供する者なし。天童現じて配饍(はいぜん)し給ひければ、驚いてそのゆゑを問ふに、「別の行なし。ただこの経の文を誦(ず)するばかり」と云ひけり。その名を弥留越(みるをつ)と云へり。 | + | また走りて、麦(ばく)を𧂐(いなむら)((「𧂐」は草かんむりに積。))に積みたるを((底本「積(ツミ)タルヲテ」。「テ」を衍字を見て削除。))左に遶(めぐ)りて往くを、主(あるじ)嗔(いか)りて、「右に遶りて、『「多入、多入』と云ふべし」とて、これを打つ。天竺の習ひに、陰陽(いんやう)の理にて、左遶(さねう)は陰物(いんもつ)滅することなり、右に遶るは陽物生ずる習ひなるゆゑに云ひける。さて逃げ走る。 |
| - | 仏前にしては、普礼の印真言、普供養の印明、大虚空蔵の印明、小金剛輪印明、真言師は必ずこれを行ず。その後(のち)、本尊の呪、念誦するなり。敬礼天人(きやうらいてんにん)の四句は、心地観経の文なり。三身の礼なり。初めの二句は応身(おうじん)、次の二句は報身(ほうじん)、後の一句法身(ほつしん)なり。如来妙色身等の二偈は、勝鬘経の文なり。勝鬘夫人(しようまんぶにん)の宮中にて、遥かに霊山(りやうぜん)の本師を礼し給ひし文、初めの四句一偈は応身、次の二句は報身、後の二句は法身なり。必ずこれを誦すべし。 | + | 死人を葬送する所に行きて、右に遶りて、「多入多入」と云ふ時、人嗔りてこれを打つ。「『かくのごときのこと、今はあるべからず』と云ふべし」と云ひけり。また逃げ走る。 |
| - | 我此(がし)の道場の文勝なり。経文「能礼所性空寂、自身他身体無二、願共衆生体解道、発無上道帰真際」。この経文は往生要集にこれあり。経は忘却せり。我此道場の一具なり。 | + | 人、婦(め)を迎へて行くに行き合ひて、「かくのごときのこと、今はあるべからず」と云ふ時、人嗔りてこれを打つ。 |
| - | 華厳経礼拝は殊勝の行なり。一仏を礼する、なほその徳大なり。凡眼(ぼんげん)の見ざること、盲人のごとし。天人・賢聖(げんじやう)、仏眼の照らす所、帝釈の網のごとく明鏡の影のごとし。十方浄土に影現して、一々の仏の御前に、われ礼をなす。その数辺際あるべからず。これのゆゑに、一礼の徳、金輪際(こんりんざい)に至る。一塵、転輪王(てんりんわう)の果報を得と云へり。懈怠(けだい)の人のため、その徳を記せり。一偈一印一念、すべて深く思へば、法界に融す。いかがなほざりに思はむや。輪王果報を得ることは、心地観経の説なり。 | + | 逃げ走りて、雁(がん)取らんとて、網を張りて伺ひ見る者ありけるところを、荒く走るほどに、雁みな飛び去りけり。彼の輩(ともがら)、嗔りてこれを打ちて云はく、「かくのごときところをば、匍匐(ほふく)とはらばうて行くべし」と云ひける。 |
| - | 上人に多種あり。鹿角上人、落ちげもなくて落つるなり。牛のふぐり上人、落ちげにて落ちず。牛角上人、落ちげにもなくて落ちず。蜘蛛(ちちゆ)上人、蜘(くも)の家を作りてあれば、虫かかれば取りて食とするごとく、庵を結びて栖(す)めば、自然に食物来たるを用ゆるなり。井杙(ゐぐひ)上人、これも井杙の自然に万物流れかかれば、それにまかせてあるごとく、かかるにしたがひて世を渡る。唐(からから)上人、唐の僧の唐国に在るを云ふなり。唐此(からここ)の土上人、唐僧の日本へ越ゆるなり。隆老((蘭渓道隆))等のごとし。此唐(ここから)上人、日本の僧の渡唐せるなり。此此(ここここ)上人、日本僧なり。 | + | さて、逃げ走りて、布曝(さら)し干すところを、はらばうて行くに、守(まぼ)る者の、「窃盗のため、かくのごとくする」とてこれを打ちけり。七度打ちてけり。 |
| - | 近代、唐僧多く渡りて、唐様(からやう)世に盛りなり。国ごとにして人の風情(ふぜい)少し変はれり。存知(ぞんぢ)すべきことなり。ある人は、一向唐様と云ひて、仰いで信じ、戒律教門に違(い)する順ずる知らざる人これあり。愚かなり。あるいは異国様(いこくやう)とて誹(そし)り信ぜる輩(ともがら)これあり。みな偏執なり。 | + | 呪願は時に随ふべし。愚痴の輩、彼の摩伽羅がごとくなるべし。律の中にこれあり。 |
| - | 唐国は大乗の機多き国にて、上古より禅師多く聞こゆ。伝灯録等に見えたり。当時も禅門盛りにして、在家・出家、座禅学道人多し。教門には天台・法相これあり。華厳は高麗盛りなりと聞こゆ。唐にも翫(もてあそ)びて、禅師の中にも多く翫ぶ。大恵((一行))は千遍経を披覧((「覧」は底本、言べんに覧。))せりと云へり。清凉大師((澄観))・圭峯禅師((圭峰宗密))、もつぱらこれを宗とす。真言・三論・戒律、同廃と云へり。密宗は四大師((空海・最澄・円仁・円珍))渡り給ひて、日本に盛りなり。天台宗、伝教大師((最澄))渡し給ひて、随分これあり。法相も同じくこれあり。華厳・三論は人少なし。律は近代中興せり。宋朝は勝(すぐ)れたり。唐僧無学長老((無学祖元))等、律僧を貴びて、在世のごとく申されけるとかや。宋朝は五十年ばかりの前、律院の長老蓮宗師とかや聞きし。ただ一人、持斎(ぢさい)の僧と沙汰しき。天下に持斎の僧すたれ、魚肉等これを用ゐる事、人目を憚らず云々。 | + | 呪願の本意、呪は言葉、語業(ごごふ)にわたるべし。和歌のごとく願はば意業(いごふ)、丁寧なるべし。合掌は身業(しんごふ)、慎しむべし。三業相応して行業必ず成ず。 |
| - | 日本は律僧は申すに及ばず、常の名僧も用ゐざる人多し。戒律・真言の行儀は、当代は日本事宜(よろ)しきか。宋朝は戒律・真言の行法はすたれたりといへども、道心ありて、座禅工夫の人多し。まことに道心ありて、用心あやまらずは、戒律おろかなりとも、乗急戒緩(じようきふかいくわん)の人たるべし。日本の僧、座禅工夫の人少なし。真言の行法などは、随分に当代もこれあり。 | + | 在世に貧女非人なるありけり。糞(ふん)の中より、銭を二文見付けて、洗うて持ちたるが、僧を信して、この僧に供養しける。維那(いな)呪願すべかりけるを、時の長老の上座、感気あまり、われと丁寧に呪願しけり。 |
| - | 彼此(ひし)互ひに得失これをわきまへて、他の非を見ずして、心を励ますべし。遍(へん)に信じ遍に誹(そし)ることよしなし。可し依る法に。人に依るべからず。これすなはち、四依の一つなり。憶断(おくだん)にあらず。いづれもまことあらば、一徳に余の失を消すべし。 | + | 施心の因、呪願の縁、感応(かんおう)通じて、形皃(ぎやうみやう・かたち)殊勝に成つて、大国の王の后になりにけり。もとより僧を信じ、このことにいよいよ信心ありて、多く宝をもつて僧を供養しけり。その時、かの上座の僧、随喜せず。また呪願せず。夫人(ぶにん)、疑うて云はく、「わがわづかの供養をば呪願し給ひし。今、供養殊勝なり。など御随喜なき」と問ふに、「先の供養は功徳大なり。よつて呪願しき。今の供養は功徳なし」と答へけり。 |
| - | 古人の云はく、「一得得あれば、万失失にあらず。一失失あれば、万得得にあらず、云々」。これもつともしかるべし。水火のあひ奪ふかごとし。互ひに盛りなれば、しばらく彼の勢を奪ふこと現量(げんりやう)なり。此量を待つべからず。ただ内行実あれば、随分利益空かるべからず。三業実あれば、顕密・禅教・聖・浄土、いづれもいづれもその益空しかるべからざるものか。これ金言なり。しばらく先蹤(せんじよう)あり。何ぞ疑惑を致さんや。 | + | 只人の労(いたは)り、民の費(ついえ)なるべし。施(せ)の本意は己を止ると云へり。わが用ゆべき分を用ゐずして、いよいよする布施なり。公役(くやく)に人民の血を絞りて供養せむ、まことに功徳たるべからず。論に云はく、「それ施は心にあり。事物にあらず。多くは施と成らず」。心誠実(じやうじつ)なるを施と云ふべし。 |
| - | [[zotan05-03|<< | + | 貧女が一灯といふこと、人ごとにこれを知れり。在世に難陀(なんだ)と云ふ非人の女人ありけり。国王・長者の万灯を灯して仏に供養するを見て、うらやましく思ひて、われ先世に福業(ふくごふ)なくして貧賤の身となれり。今世に善業なくは、来世も憑(たの)みなく、悲しく覚えて、一銭を乞ひ得て、油を買ひけり。志を語るを聞きて、売る者少し添へて取らせけり。この一灯を仏に供養して、願を発(ほつ)して云はく、「われ一灯をもつて、一切衆生の愚痴の闇を照らして、大智光明法界(だいちくわうみやうほふかい)を照らして、一切衆生と共に菩提の道を成す。云々。これ、ただわが呪願なり。人の呪願を待ず」。この志、実あるゆゑに、余の灯明はみな油尽き火消えけり。この一灯、数日消えず。 |
| - | ===== 翻刻 ===== | + | 目連、維那(いの)なるが、こころみに吹き扇(あふ)げども、すべて消えざりけり。目連、このことを仏((釈迦))に問ひ奉る。仏の言はく、「かの女人、大乗の心をもつて灯す。たとひ大海の水をもつて消し、大風吹くとも、消すべからず。なんぢ声聞(しやうもん)の神通及ふべからず。この功徳をもつて、多劫悪趣に堕せず。後(のち)、灯光仏と成るべし。云々」。 |
| - | 上人事 | + | 呪願あれども、無実の功徳少なし。心に実あれば、たとひ呪願無くとも行業成ずることこれあらん。仙人((次の梵志のこと。))の意罸のごとし。 |
| - | 昔ノ上人ハ大国ハ申ニ不及ハ我国ノ上代ノ上人ノ事聞ニ之ヲ名利 | + | |
| - | 深ク厭ヒ棄テ道行高ク願ヒ行ヒキ先ツ世ヲ遁レタル形名利心ニ | + | |
| - | ナカルヘシ皆毎ニ人思ヒ立チナカラ猶ヲ々ステハテヌニヤ大象尾ニカカル/3-14l | + | |
| - | https:// | + | 昔し梵志(ぼんじ)((在家の婆羅門。))ありけり。山中にして梵行しけり。妻あひ従ひ給仕しけり。美人なりけることを国王聞き給ひて、梵志に乞ひ給ひけるを、「王の威徳、天下に召し仕ふ人乏しかるべからず。わが身には、この妻(つま)、昔の情けをもつて一人給仕することなり。御免あれ」とて、進(まゐ)らすべからざるよし申すを、「梵行を修す、女人給ふべからず」とて、押して召し取られけり。 |
| - | 夢ニタカハス ○昔漢朝ニ貴キ聞ヘ有テ勅使ヲ立テメサレシニ | + | 梵志、大きに憤(いきどほ)り恨みて、天下を失ふべき念、強盛(がうじやう)なり。妻に告げて云はく、「われ天下を失ふべし。ただし、なんぢ一人、我を念じて一心にして座せよ」と教へけり。果して、天より大きなる石を下して、国王ならびに人民、一時に命おはんぬ。 |
| - | 山中ニ住シテ官人ノタメ礼儀セス鼻ヨリ涕タル不拭官人為我 | + | |
| - | 拭ヘ涕ヲ答云何ノ暇有テカ為俗人ノ拭ハン涕ヲ云々コレステハテタル | + | |
| - | 形也 ○高野ノ五智房ハ覚鑁上人ノ弟子知法ノ人ト | + | |
| - | 聞ヘケリ乱行ノ名有リケレハ灌頂行テ大阿闍梨ニテ列ニ立 | + | |
| - | タルヲ寺僧恥カマシキ事アタエント支度シケルニ雨ル日笠ヲモタ | + | |
| - | サルニ雨カカラサリケレハ人敬ウテ別ノ事ナカリケリトイヘリ遁世ノ | + | |
| - | 門ニ入テ小庵ニ行テ籠居シタルヲ後白川ノ法皇ノ高野ノ御 | + | |
| - | 幸ノ次ニ被召サケルニ風気イフセク候トテ不参セ度々メスニ不参 | + | |
| - | サテ庵室ヘ御幸ナリタルニホタタキテ腰アフリテ立モアガラデ | + | |
| - | 風気ノ候ト申ケレハ背ヲヲカミテ還御有リケリト云ヘリ今ノ | + | |
| - | 代ニハカカル人モアラシヲカマセ給フ王モヲハシマスヘシトモヲホヘス/3-15r | + | |
| - | ○和州三輪山常観房ノ上人ハ真言師貴キ聞ヘ有テ興福寺ノ | + | これを意罸と云へり。身口(しんく)の所作なし。ただ意業至(いた)て、強盛にして、このことありけり。三業には、意業本(もと)たり。身と口とは、いかに成ること多けれども、意業の実(まこと)なければ、善悪とも業を成さず。ただわづかの遠縁(をんえん)たるべし。されば、意おこらぬことを、身口ばかりせめて、「よしなし」と思ひて、同法等をもあながちに事行なさしめず。意、実(まこと)なければ、なすこと、いたづらなるべし。少しの結縁(けつえん)はあるべし。 |
| - | 時ノ別当請シ給ヒケレハ参シテ小衣ニ足駄ハキテ参シテ罷リ出 | + | |
| - | ラレケル時庭ヘ下テヲクラセ給ヒケレハタカ子ニテヲハシマスト | + | |
| - | 問ヒ申サルルニ普賢寺入道ノ子息ニテ侍リト被仰ケレハサテハ | + | |
| - | 上郎ニテヲハシマシケルヤト被申ケル今ノ代ニハ尾籠ノ上人 | + | |
| - | 也ト沙汰アラマシ此ノ事ヲ感シテ此御房ハマコトノ上人也ケリ | + | |
| - | サスカ我許ヘ来ル程ノ人タレトシラスヤアルヘキ貴シト被仰ケリト | + | |
| - | 云ヘリ今ノ代ノ人ハ名人ノ心ノミ有テ不恥顛倒ノ心ヲ也サレハ仏 | + | |
| - | 徳ヲカフル人世ニマレニノミ聞ヘ侍リ ○故金剛王院ノ | + | |
| - | 僧正実賢ハ知法ノ人智者ニテ法愛ノ心フカクシテイカナル者 | + | |
| - | トモ野ノ中路ノ辺ニテモ法門物語セラレケルト云ヘリ故金剛 | + | |
| - | 王院ノ厳海僧正召仕ヒケル承仕法師老々タルカ韮畠作リ/3-15l | + | |
| - | https:// | + | 昔、賀茂の斎院((選子内親王))、道心者にておはしける。斎院の習ひとて、昔より念仏申すことなし。これ本地の御心を知らずして、ただ凡心の思ひつけたることなるべし。常に西に向ひて仏をば御心に念じながら、口称(くしよう)なかりける。さて、詠じて云はく、 |
| - | ケル所ニテ故僧正御房ハイカナル承仕ヲカ召シ仕シト問ハレケレハ | + | 思へども忌むとて云はぬことなればそなたに向きて音(ね)をのみぞ泣く |
| - | 畏テ只信有ル者ヲ被召仕候シコレ愚痴ノ者ナレトモ信ノ有レハ | + | |
| - | 召仕也トテ理趣礼懺ハカリ御許候テ年久ク被召仕候シ | + | |
| - | 汝ハ愚痴ノ者ナレハフカキ法門マコトシキ義理イカニ云トモ | + | |
| - | 知ルヘカラス浅キコトハカリヲシエム仏ハ無相ノ法身トテ悟リ | + | |
| - | フカキ行者カ観念シテ深キ利益アリ重々ノ機ニ分々ノ利益ヲホト | + | |
| - | コシ給フヲロカナル者ノ敬フ心ナクテ木石ノ如ク思ヘルニハ只木石ノ | + | |
| - | 如シ益ナシ己カ智恵ニテハ深キ観心ハカナハシ只仏ヲ敬ヒヲソレツツ | + | |
| - | シム事我レ程ニ思ヘト仰セ候シカハ仏ノ御前ニテ香華ヲモマイラセ | + | |
| - | 候ヨロツ立振舞候シ心僧正御前ノコトクチトモタカハス振舞 | + | |
| - | 候シカハ其ノ心サマヲ御覧シテ信有ル者ニ思ハレマヒラセテ候シカト | + | |
| - | 申ケレハ感涙ヲナカシテ已ニ学問シタリトテ悦テ一期ノ間折/3-16r | + | |
| - | 節衣物タヒテケリコレホトノ道理ハ人コトニ知リヌヘシ僧正モイ | + | さて、めでたく往生し給へりと申し伝へたり。 |
| - | カカ知リ給ハサラムナレトモ先達ノ口伝マコトニサルヘシト感シ思 | + | |
| - | ハレケル常ノ人ノ心ハ仏ヲハ恥ス礼セス檀那ヲハ恥ヘツラフ類 | + | |
| - | 多シカカル心ニテハ檀那ノ施ハ受事有リトモ仏ノ恩ハ有カタカル | + | |
| - | ヘシコレ顛倒ノ心也 ○仏ニ恭敬ノ心ナキハ昔龍蛇ノ中ヨリ | + | |
| - | 来レル故又彼ノ中ニ可生律ノ中ニ見ヘタリ仏前ニ参詣シテハ必ス可 | + | |
| - | 礼ス仏ヲ華厳等ノ経ニ五悔等ノ行其ノ徳委細也礼懺経尤モ明 | + | |
| - | 明也 ○東福寺ノ開山モ夜中ニ於テ仏前ニ礼拝シ帰命 | + | |
| - | 本覚等(文)誦シ給ヒケルト承ル此ノ文ハ天竺ニ破戒ノ僧千僧ニ不入 | + | |
| - | シテ僧ノ数トモ人不思ハサリナカラ一人事闕テ請シテ供養スルニ | + | |
| - | 人皆ナ破戒無懺ナル事ヲ知テ饍ヲ持テ供スル者ナシ天童現シテ | + | |
| - | 配饍シ給ケレハ驚テ其ノ故ヲ問ニ別ノ行ナシ只此ノ経ノ文ヲ誦スル/3-16l | + | |
| - | https:// | + | 供料(くれう)にかかり、布施取らむとて、高声(かうしやう)に念仏し、頸(くび)ひねりて申す人よりも、まことあれば往生することなり。経に云はく、「もし人時に臨み念を作すことあたはざれば、ただし知らめ彼の方に仏ありと。往生の意を作さば、また往生を得。云々」。これ意念往生なり。観経((観無量寿経))の下品中生(げぼんちゆうしやう)((下品上生の誤り。))も、ただ十二部経の名字を聞く意して往生すと見えたり。 |
| - | ハカリト云ケリ其ノ名ヲ弥留越ト云ヘリ ○仏前ニシテハ普礼ノ | + | [[zotan05-04|<< |
| - | 印真言普供養ノ印明大虚空蔵ノ印明小金剛輪印明真 | + | |
| - | 言師ハ必ズ行ス之ヲ其ノ後チ本尊ノ呪念誦スルナリ敬礼天人ノ四句ハ | + | |
| - | 心地観経ノ文也三身ノ礼也初ノ二句ハ応身次ノ二句ハ報身後ノ | + | |
| - | 一句法身也如来妙色身等ノ二偈ハ勝鬘経ノ文也勝鬘 | + | |
| - | 夫人ノ宮中ニテ遥ニ霊山ノ本師ヲ礼シ給シ文初ノ四句一偈ハ応身 | + | |
| - | 次ノ二句ハ報身後ノ二句ハ法身也必ズ可誦ス之ヲ我此ノ道場ノ文 | + | |
| - | 勝也経文 能礼所性空寂自身他身体無二 | + | |
| - | 願共衆生体解道 発無上道帰真際此経文ハ | + | |
| - | 往生要集ニ有之経ハ忘却セリ我此道場ノ一具也華厳経礼 | + | |
| - | 拝ハ殊勝ノ行也一仏ヲ礼スル猶ヲ其ノ徳大也凡眼ノ不コト見如シ盲人ノ | + | |
| - | 天人賢聖仏眼ノ所照如帝釈ノ網ノ如明鏡影十方浄土ニ影/3-17r | + | |
| - | 現シテ一々ノ仏ノ御前ニ我レ作ス礼ヲ其ノ数不可有ル辺際是ノ故ニ一礼ノ徳 | + | ===== 翻刻 ===== |
| - | 至ル金輪際ニ一塵得ト転輪王ノ果報ヲ云ヘリ懈怠ノ人ノタメ其ノ徳ヲ | + | |
| - | 記セリ一偈一印一念都テ深ク思ヘハ法界ニ融ス如何カナヲ | + | |
| - | サリニ思ハムヤ輪王果報ヲ得ル事ハ心地観経ノ説也 | + | |
| - | ○上人ニ有多種鹿角上人ヲチケモナクテ落ルナリ牛ノフクリ | + | |
| - | 上人ヲチゲニテ落ズ牛角上人ヲチケニモナクテヲチス蜘蛛 | + | |
| - | 上人蜘ノ家ヲ作リテ有レハ虫カカレハ取テ食トスル如ク庵ヲ結テ栖メハ | + | |
| - | 自然ニ食物来ルヲ用也井杙上人コレモ井杙ノ自然ニ万物 | + | |
| - | 流レカカレハソレニマカセテアル如クカカルニシタカヒテ世ヲ渡ル唐 | + | |
| - | 上人唐ノ僧ノ在唐国ニ云也唐此ノ土上人唐僧ノ日本ヘ越ユル也 | + | |
| - | 如シ隆老等ノ此ノ唐上人日本ノ僧ノ渡唐セル也此此上人日 | + | |
| - | 本僧也近代唐僧多ク渡テ唐様世ニ盛也国コトニシテ人ノ風/3-17l | + | |
| - | https:// | + | 呪願ノ事 |
| + | 華厳経大集経等ニ物コトニ呪願スヘシト見ヘタリ一巻サナガラ | ||
| + | 呪願ノ文アリ世間ノ人行シテナレテ口ニ呪願ノ文ヲ唱レトモ其ノ | ||
| + | 意ロ信解ナケレハ其ノ徳モ薄カルヘシ思ヒ入レテ信心アラハ其ノ徳大 | ||
| + | ナルヘシ ○昔シ三蔵法師寺物ヲ借用シ非法ノ事ニ用了テ | ||
| + | 為償ヒ返サン他国ヘ行テ観化持帰ル路ニテ命終ス寺物ヲ返スト | ||
| + | 云ヘトモ不法ニ用ヰタル故ニ地獄ヘ落ツ温室ニ入ル如クニ覚テ呪願ニ | ||
| + | 云沐浴身体ヲ当ニ願ス衆生身心無垢内外清浄ナラン依テ呪願ニ出テ | ||
| + | 地獄ヲ了テ生天ニ律蔵ノ中ニ有之 ○慈童女長者貧乏ニシテ/3-19r | ||
| - | | + | |
| - | 戒律教門ニ違スル順スルシラサル人コレ有リ愚也或ハ異国様 | + | |
| - | トテ誹リ信セル輩コレアリ皆ナ偏執也唐国ハ大乗ノ機多キ国ニテ | + | |
| - | | + | |
| - | | + | |
| - | | + | 戴ク云々慈童女カ云ク此ノ地獄ニ受苦ノ人多キ哉答不知ラ数ヲ我レ |
| - | | + | |
| - | | + | |
| - | 又伝教大師渡シ給テ随分有リ之法相モ同ク有之華厳三論ハ | + | 輪地ニ落テ兜率天ニ生レキ天台ノ師此ノ事ヲ釈シ給フニハ十界ノ果 |
| - | | + | |
| - | 律僧ヲ貴ヒテ在世ノ如ク被申ケルトカヤ宋朝ハ五十年計ノ前 | + | |
| - | | + | 心有誠呪願衆生ノ言ミナ衆生ト共ニ仏法ニ入テ二利円満ノ/3-19l |
| - | 下ニ持斎ノ僧スタレ魚肉等用ル之事人目ヲ不憚ラ云々日本ハ律 | + | https:// |
| - | 僧ハ申ニ不及ハ常ノ名僧モ不ル用人多シ戒律真言ノ行儀ハ当 | + | |
| - | 代ハ日本事宜歟宋朝ハ戒律真言ノ行法ハスタレタリト云ヘトモ | + | |
| - | 道心アリテ坐禅工夫ノ人多シマコトニ道心アリテ用心アヤマラ | + | |
| - | スハ戒律ヲロカナリトモ乗急戒緩ノ人タルヘシ日本ノ僧坐禅工 | + | |
| - | 夫ノ人スクナシ真言ノ行法ナトハ随分ニ当代モ有之彼此タカ | + | |
| - | ヒニ得失是ヲワキマヘテ他ノ非ヲ見スシテ心ヲ励スヘシ遍ニ信シ遍ニ | + | |
| - | 誹ル事ヨシナシ可シ依ル法ニ不可依ル人ニ是レ則チ四依ノ一也非ス憶断ニ | + | |
| - | イツレモマコトアラハ一徳ニ餘ノ失ヲ消スヘシ古人ノ云ク一得有得 | + | |
| - | 万失非失ニ一失有ハ失万得非得云々コレ尤モ可然ル水火ノ相ヒ | + | |
| - | 奪カ如シタカヒニ盛ナレハシハラク彼ノ勢ヲ奪フ事現量也不可 | + | |
| - | 待此量ヲ只内行有実随分利益不可空カル三業有実顕密/3-18l | + | |
| - | https:// | + | 願ナレハイルカセニ思フヘカラス纔ニシテ呪願ノ力大ナル益アルヘシ施物ヲ |
| + | 得テハコトニ呪願スヘシ心地観経ノ文常ノ人知之ヲ必ス誦ス之能施 | ||
| + | 所施及ビ施物於三世ノ中無所得我等安住最勝心ニ供養 | ||
| + | 十方一切仏ヲ華厳大集ニハ大小便手水剃刀ニモ皆呪願ノ文 | ||
| + | 有之殊ニ粥斎ノ呪願僧衆不可忘者也南山大師ノ呪願ノ文 | ||
| + | 此食色香毎ニ人知之ヲ一切ノ食物ニ通シテ呪願スヘシト見タリ | ||
| + | 文コレ彼ノ大師ノ呪願ノ文也六通聞香ノ句殊勝也念食々香 | ||
| + | 如栴檀風ノ一時ニ普薫十於食能生六波羅蜜及以ヒ三行ヲ(自行共/行衆行也) | ||
| + | ○呪願ハ事ニヨリテ定レル言ナシ只志ヲノヘテ祈念ス又一切ニ亘テ | ||
| + | タカハヌ事モアルヘシ大方ハ其ノ意ヲ得テ言ハ用ユヘシト見ヘタリ | ||
| + | ○本説ハ呪願ハ上座ノ可キ行ス事ト見ヘタリ首座ノ行スル其ノ儀歟或ハ | ||
| + | 維那行ス之ヲ上座ハ多クハ長老若ハ其衆ノ中ノ上座也律ノ呪願/3-20r | ||
| - | | + | |
| - | | + | 作法在家人始メテ作ルニ家ヲ若ハ喜ヒ有憂ヘモアレハ為祈祷必ス請スル |
| + | 僧ヲ習ヒト云ヘリ或ル長者請シ僧ヲ供養シケルニ舎利弗時ノ上 | ||
| + | 座ニテ呪願シケル彼ノ長者国王ヨリ朝恩ノ大ナル事有リケリ | ||
| + | 妻産平安ニシテ男子生ミテケリアキナヒ船安穏ニシテ宝多クエタリ | ||
| + | カカル吉事計会セリ仍テ呪願ノ詞ノ中ニ常ニ可ト如ク今日ノ目出申 | ||
| + | タリケレハ長者悦テ加布施ニ白㲲等ノ物ヲホクシテケリ僧ノ中ニ | ||
| + | 愚痴ナル僧摩伽羅ト云有リケリ此ノ事見聞シテウラヤマシク思テ舎 | ||
| + | | ||
| + | 間無ク止コトシテ書イテアタフ摩伽羅上座トシテ僧ヲ請シテ供養スル | ||
| + | 長者ノ許ニテ呪願シケリ長者国王ヨリ子細有テ重キ罸アリ | ||
| + | ケリ妻難産シテ死了船破テ宝多ク失了如ク此愁ノ事有ルニ習ヒ/3-20l | ||
| - | https:// | + | https:// |
| + | |||
| + | ヲホヘタル文ヲ誦シテ常ニ可ト如クナル今日ノ云時長者嗔リテ以テ杖ヲ打ツ之ヲ又 | ||
| + | 走テ麦ヲ𧂐積タルヲテ左ニ遶リテ往クヲ主シ嗔テ右ニ遶テ多入々々ト | ||
| + | 可云トテ打之ヲ天竺ノ習ヒニ陰陽ノ理ニテ左遶ハ陰物滅スル事也 | ||
| + | 右ニ遶ハ陽物生スル習ナル故ニ云ケルサテ逃走ル死人ヲ葬送スル所ニ | ||
| + | 行テ右ニ遶テ多入々々ト云時人嗔テ打之ヲ如此ノ事今ハ不可有ル云 | ||
| + | ヘシト云ケリ又逃ケ走ル人婦ヲムカヘテ行ニ行キ合テ如此ノ事今ハ不ト可 | ||
| + | 有云時人嗔テ打ツ之ヲ逃ケ走テ雁取ラントテ網ヲ張テ伺ヒミル者有 | ||
| + | ケル処ヲアラク走ルホトニ雁皆ナ飛去ケリ彼ノ輩嗔テ打テ之云ク如キ | ||
| + | 此ノ処ヲハ匍匐トハラバウテ行ヘシト云ケルサテ逃走テ布曝干処ヲ | ||
| + | ハラハウテ行ニ守ル者ノ為窃盗ノ如此スルトテ打之ケリ七度打テ | ||
| + | ケリ呪願ハ可随フ時ニ愚痴ノ輩彼ノ摩伽羅カ如クナルヘシ律ノ中ニ | ||
| + | 有之 ○呪願ノ本意呪ハ言バ語業ニ可シ亘ル如ク和歌ノ願ハ/3-21r | ||
| + | |||
| + | 意業可シ丁寧ナル合掌ハ身業可慎シム三業相応シテ行業必ス成ス在世ニ | ||
| + | 貧女非人ナル有リケリ糞ノ中ヨリ銭ヲ二文ミツケテ洗フテ持タルカ | ||
| + | 僧ヲ信シテ此ノ僧ニ供養シケル維那呪願スヘカリケルヲ時ノ長老ノ | ||
| + | 上座感気アマリ我ト丁寧ニ呪願シケリ施心ノ因呪願ノ縁感 | ||
| + | 応通シテ形皃殊勝ニ成テ大国ノ王ノ后ニ成ニケリ本ヨリ僧ヲ信シ | ||
| + | 此事ニ弥信心有テ多ク宝ヲ以テ僧ヲ供養シケリ其ノ時カノ上 | ||
| + | 座ノ僧不随喜亦タ不呪願セ夫人疑テ云我カワヅカノ供養ヲハ呪 | ||
| + | 願シ給シ今マ供養殊勝也ナト御随喜ナキト問フニ先ノ供養ハ功 | ||
| + | 徳大也仍テ呪願シキ今ノ供養ハ功徳ナシト答ケリ只人ノ労民 | ||
| + | 費ナルヘシ施ノ本意ハ止ルト己ヲ云ヘリ我カ可用ユ分ヲ不用ヒシテ弥スル | ||
| + | 布施也公役ニ人民ノ血ヲ絞テ供養セムマコトニ功徳タルヘカラス | ||
| + | 論ニ云夫レ施ハ在心不在事物ニ多ハ不成施心誠実ナルヲ施ト云ヘシ/3-21l | ||
| + | |||
| + | https:// | ||
| + | |||
| + | ○貧女カ一燈ト云事人コトニ知レリ之ヲ在世ニ難陀ト云フ非人ノ女 | ||
| + | 人有リケリ国王長者ノ万燈ヲトモシテ仏ニ供養スルヲ見テ浦 | ||
| + | 山敷思ヒテ我先世ニ福業ナクシテ貧賤ノ身トナレリ今世ニ善業 | ||
| + | ナクハ来世モ憑ミナクカナシク覚テ一銭ヲ乞得テ油ヲ買ケリ | ||
| + | 志ヲ語ルヲ聞テ売者少シ添テトラセケリ此ノ一燈ヲ仏ニ供養 | ||
| + | シテ願ヲ発シテ云我レ一燈ヲ以テ一切衆生ノ愚痴ノ闇ヲ照シテ大 | ||
| + | 智光明法界ヲ照シテ一切衆生ト共ニ成ス菩提ノ道ヲ云々是レ只 | ||
| + | 我カ呪願也人ノ呪願ヲ不待タ此ノ志実アル故ニ餘ノ灯明ハ皆油ツキ | ||
| + | 火消ケリ此ノ一燈数日不消目連維那ナルカ心ミニ吹キ扇ゲトモ | ||
| + | 都テ不消ケリ目連此ノ事ヲ仏ニ奉ル問ヒ仏ノ言ハク彼ノ女人大乗ノ | ||
| + | 心ヲ以テ燈ス設大海ノ水ヲ以テ消シ大風吹クトモ不可消汝声 | ||
| + | 聞ノ神通不可及フ以テ此ノ功徳ヲ多劫不堕セ悪趣ニ後チ可成ル燈光/3-22r | ||
| + | |||
| + | 仏ト云々呪願アレトモ無実ノ功徳少シ心ニ有ハ実設ヒ無トモ呪願行 | ||
| + | 業成スル事有ン之レ仙人ノ意罸ノコトシ ○昔シ梵志有ケリ | ||
| + | 山中ニシテ梵行シケリ妻相ヒ従ヒ給仕シケリ美人ナリケル事ヲ国 | ||
| + | 王聞給テ梵志ニ乞イ給ヒケルヲ王ノ威徳天下ニ召シ仕フ人不可ヘ乏シカル | ||
| + | 我カ身ニハ此ノ妻昔ノ情ヲ以テ一人給仕ル事也御免アレトテ不可 | ||
| + | 進ス由申ヲ梵行ヲ修ス女人不可給トテ押テ召取ラレケリ梵志大ニ | ||
| + | 憤恨テ天下ヲ可キ失フ念強盛也妻ニ告テ云ク我レ天下ヲ可失フ但 | ||
| + | 汝一人念シテ我ヲ一心ニシテ坐セヨトヲシヘケリ果シテ天ヨリ大ナル石ヲ下テ | ||
| + | 国王并ニ人民一時ニ命チ了ンヌ此レヲ意罸ト云ヘリ身口ノ所作ナシ只 | ||
| + | 意業至テ強盛ニシテ此ノ事有リケリ三業ニハ意業本タリ身ト口トハ | ||
| + | イカニ成ル事多レトモ意業ノ実ナケレハ善悪共不成業ヲ只纔ノ | ||
| + | 遠縁タルヘシサレハ意ヲコラヌ事ヲ身口ハカリセメテヨシナシト思テ/3-22l | ||
| + | |||
| + | https:// | ||
| + | |||
| + | 同法等ヲモアナカチニ事行ナサシメス意実ナケレハナス事イタツラ | ||
| + | ナルヘシ少ノ結縁ハアルヘシ ○昔賀茂ノ斎院道心者ニテオハ | ||
| + | シケル斎院ノ習トテ昔ヨリ念仏申ス事ナシコレ本地ノ御心ヲ | ||
| + | シラスシテ只凡心ノ思ヒツケタル事ナルヘシ常ニ西ニムカヒテ仏ヲハ御 | ||
| + | 心ニ念シナカラ口称ナカリケルサテ詠シテ云ク | ||
| + | 思ヘトモ忌トテイハヌ事ナレハソナタニムキテネヲノミソナク | ||
| + | サテメテタク往生シ給ヘリト申ツタヘタリ供料ニカカリ布施トラム | ||
| + | トテ高声ニ念仏シ頸ヒネリテ申ス人ヨリモマコトアレハ往生スル | ||
| + | 事也経ニ云若シ人臨時ニ不能ハ作コト念ヲ但知メ彼ノ方ニ有仏作往 | ||
| + | 生ノ意ヲ亦得往生ヲ云々コレ意念往生也観経ノ下品中生モ只 | ||
| + | 聞ク十二部経ノ名字ヲ意シテ往生スト見ヘタリ/3-23r | ||
| + | |||
| + | https:// | ||
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