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text:sesuisho:n_sesuisho8-122 [2022/12/26 12:42] – 作成 Satoshi Nakagawatext:sesuisho:n_sesuisho8-122 [2022/12/26 12:43] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
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 和泉の堺にて、これへ参る道に、鈍なる男あり。何やらん、手に持ちてゐたるを、横道(わうだう)なる者、通りざまにおつとり逃げ行く。「やれ盗人よ」と呼ばはれば、結句、「取りはせぬ。買うた」とあらがふ。誰も極むる者なうて、捕手(とりて)のものにぞ((「にぞ」は底本「こそ」。諸本により訂正。))なりける。 和泉の堺にて、これへ参る道に、鈍なる男あり。何やらん、手に持ちてゐたるを、横道(わうだう)なる者、通りざまにおつとり逃げ行く。「やれ盗人よ」と呼ばはれば、結句、「取りはせぬ。買うた」とあらがふ。誰も極むる者なうて、捕手(とりて)のものにぞ((「にぞ」は底本「こそ」。諸本により訂正。))なりける。
  
-「かれを見るに、たちまちわが物を奪はれても、所(ところ)に正路(しやうろ)なる地頭なくは、浅間しや、取られ損にこそならんずれ」と語るに、「取られても、取りても、隠れはあるまいが」と問ふ時、「されば、右申せしは嘘なり。まことは、今朝、鳶(とび)か魚をくはへ((「くはへ」は底本「くはん」。諸本により訂正。))来たり。宿院(しゆくゐん)の内にて食らはんとするところに、松の上より烏飛び下り、これを奪ひ取り、木の上にて食らふ。鳶は『ひいるぬす人((昼盗人・鳶の鳴き声))』と叫べば、烏は『かうた、かうた((買うた・烏の鳴き声))』と言うて、おのが徳にぞなしたる。をかしげにて心深し((底本この文小書き。))。+「かれを見るに、たちまちわが物を奪はれても、所(ところ)に正路(しやうろ)なる地頭なくは、浅間しや、取られ損にこそならんずれ」と語るに、「取られても、取りても、隠れはあるまいが」と問ふ時、「されば、右申せしは嘘なり。まことは、今朝、鳶(とび)か魚をくはへ((「くはへ」は底本「くはん」。諸本により訂正。))来たり。宿院(しゆくゐん)の内にて食らはんとするところに、松の上より烏飛び下り、これを奪ひ取り、木の上にて食らふ。鳶は『ひいるぬす人((昼盗人・鳶の鳴き声))』と叫べば、烏は『かうた、かうた((買うた・烏の鳴き声))』と言うて、おのが徳にぞなしたる。をかしげにて心深し((底本この文小書き。))。
  
 「烏は鳥中の曽参(そうしん)」とあり。 「烏は鳥中の曽参(そうしん)」とあり。
text/sesuisho/n_sesuisho8-122.1672026123.txt.gz · 最終更新: 2022/12/26 12:42 by Satoshi Nakagawa