text:sesuisho:n_sesuisho2-104
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- | 二条院((二条天皇))、和歌好ませおはしましける時、岡崎の三位((藤原俊成))、御侍(ぎよじ)の歌読みにてさぶらはれけるに、この聞こえ高きによりて、清輔朝臣((藤原清輔))召されて殿上にさぶらひけり。 | + | 二条院((二条天皇))、和歌好ませおはしましける時、岡崎の三位((藤原範兼))、御侍(ぎよじ)の歌読みにてさぶらはれけるに、この聞こえ高きによりて、清輔朝臣((藤原清輔))召されて殿上にさぶらひけり。 |
いみじき((「いみじき」は底本「いとしき」。諸本により訂正。))面目なりけるを、ある時の御会に、清輔、いづれの山とか、「このもかのも」といふことを詠まれたりければ、三位、これを難じていはく、「筑波山こそ『このもかのも』とは詠め。おほかた山ごとにいふべきにはあらず」と難ぜられければ、清輔、申していはく、「筑波山までは申すべきならず。河などにも詠み侍るべきとこそ」とつぶやきければ、三位あざ笑ひて、「証歌(しようか)奉れ」と申されけるに、清輔のいはく、「大井川の会に、躬恒((凡河内躬恒))が序書ける時、『大井川のこのもかのも』と書けること、まさしく((「まさしく」は底本「にかさしく」。諸本により訂正。))侍るものを」と言ひたりければ、諸人、口を閉ぢてやみにけり。 | いみじき((「いみじき」は底本「いとしき」。諸本により訂正。))面目なりけるを、ある時の御会に、清輔、いづれの山とか、「このもかのも」といふことを詠まれたりければ、三位、これを難じていはく、「筑波山こそ『このもかのも』とは詠め。おほかた山ごとにいふべきにはあらず」と難ぜられければ、清輔、申していはく、「筑波山までは申すべきならず。河などにも詠み侍るべきとこそ」とつぶやきければ、三位あざ笑ひて、「証歌(しようか)奉れ」と申されけるに、清輔のいはく、「大井川の会に、躬恒((凡河内躬恒))が序書ける時、『大井川のこのもかのも』と書けること、まさしく((「まさしく」は底本「にかさしく」。諸本により訂正。))侍るものを」と言ひたりければ、諸人、口を閉ぢてやみにけり。 |
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