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text:kohon:kohon002 [2014/05/07 03:04] – [校訂本文] Satoshi Nakagawatext:kohon:kohon002 [2025/11/28 14:54] (現在) Satoshi Nakagawa
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 +古本説話集
 ====== 第2話 公任大納言、屏風歌遅く進ずる事 ====== ====== 第2話 公任大納言、屏風歌遅く進ずる事 ======
  
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 ===== 校訂本文 ===== ===== 校訂本文 =====
  
-今は昔、女院始めて内裏へ入らせおはしましけるに、御屏風どもをせさせ給て、歌詠みどもに詠ませさせ給ひけるに、四月、藤の花面白く咲きたりけるひらを、四条大納言あたりて詠み給けるに、その日になりて、人々歌ども持て参りたりけるに、大納言遅く参りければ、御使して、遅きよしをたびたび仰せられつかはす。+[[kohon001|<<PREV]] [[index.html|『古本説話集』TOP]] [[kohon003|NEXT>>]]
  
-権大納言行成、御屏風たまりて書くべきよしなし給ひければ、いよいよ立ち居待たせ給ふほどに、参り給れば、歌詠ども、「かばかしき((新大系、「歌」欠字かという))ともも、え詠み出でぬに、さりとも」と、誰も心にくがりけるに、御前に参り給ふや遅きと、殿の、「いかにぞ、あの歌は。遅し」と、仰られければ、「らにはかばかしく仕らず。悪く奉りたらんは参らせぬには劣りたる事なり。歌詠むとがらの優れたらん中に、はかばかしからぬ歌、書かれたらむ。長き名にさぶらふべし」と、やういみじくのがれ申し給へど殿「あるべき事にもあらず。異人歌なても有なむ。御歌なくは、大方色紙形を書くまじ事な」など、まめやかに責め申させ給へば、大納言、「いみじく候ふわざかな。こみは誰もえ詠みえぬたびに侍るめり。中にも公任をこそ、さりともと思ひひつるに、『岸柳』といふ事を詠みたれば、いと異様なる事なりかし。これらだにかく詠みそこなへば公任はえ詠み侍らぬことはなれば、許しぶべきな」とさまざま逃がれ申し給へど、殿、あやにくに責めさせ給へば、大納言、いみじ思ひわづらひて、ふところよ陸奥紙に書きて奉り給へば、広げ前に置かせ給ふに帥どのり始めて、そこの上達部・殿上人、心にくく思ひけば、「さりとも、この大納言、故なくは詠み給はじ」と思ひつ、いつし、帥殿読み上げ給へば、+女院((上東門院・藤原彰子))内裏へはじめて((転倒記号あり))入らせおはしましけるに、御屏風どもをせさせ給て、歌詠みどもに詠ませせ給ひけるに、四月花面白けるひらを四条大納言((藤原公任))りて詠み給るに、日になり人々歌ど持て参りたりけるに、大納言ければ、御使して、遅きしをたびたび仰せられつかはす。
  
-    紫の雲とぞ見ゆる藤の花いかなる宿のしるしなるらん+権大納言行成((藤原行成))、御屏風たまはりて、書くべきよし、なし給ひければ、いよいよ立ち居待たせ給ふほどに、参り給へれば、歌詠ども、「はかばかしき((新大系、「歌」欠字かという))どもも、え詠み出でぬに、さりとも」と、誰も心にくがりけるに、御前に参り給ふや遅きと、殿の、「いかにぞ、あの歌は。遅し」と、仰せられければ、「さらにはかばかしく仕らず。悪くて奉りたらんは、参らせぬには劣りたる事なり。歌詠むともがらの優れたらん中に、はかばかしからぬ歌、書かれたらむ。長き名にさぶらふべし」と、やうにいみじくのがれ申し給へど、殿、「あるべき事にもあらず。異人の歌なくても有なむ。御歌なくは、大方色紙形を書くまじき事なり」など、まめやかに責め申させ給へば、大納言、「いみじく候ふわざかな。こたみは誰もえ詠みえぬたびに侍るめり。中にも公任をこそ、さりともと思ひ給ひつるに、『岸の柳』といふ事を詠みたれば、いと異様なる事なりかし。これらだにかく詠みそこなへば、公任はえ詠み侍らぬもことはりなれば、許したぶべきなり」と、さまざまに逃がれ申し給へど、殿、あやにくに責めさせ給へば、大納言、いみじく思ひわづらひて、ふところより陸奥紙に書きて奉り給へば、広げて前に置かせ給ふに、帥殿((藤原伊周))より始めて、そこらの上達部・殿上人、心にくく思ひければ、「さりとも、この大納言、故なくは詠み給はじ」と思ひつつ、いつしか、帥殿読み上げ給へば、 
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 +  紫の雲とぞ見ゆる藤の花いかなる宿のしるしなるらん
  
 と読み上げ給ふを聞きてなむ、褒めののしりける。 と読み上げ給ふを聞きてなむ、褒めののしりける。
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 白河の家におはしける頃、さるべき人々、四五人ばかりまうでて、「花の面白き、見に参りつる也」と言ひければ、大御酒など参りて詠み給ひける、 白河の家におはしける頃、さるべき人々、四五人ばかりまうでて、「花の面白き、見に参りつる也」と言ひければ、大御酒など参りて詠み給ひける、
  
-    春来てぞ人も問ひける山里は花こそ宿の主なりけれ+  春来てぞ人も問ひける山里は花こそ宿の主なりけれ
  
 人々めでて詠み合ひけれど、なずらひなるなかりけり。 人々めでて詠み合ひけれど、なずらひなるなかりけり。
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 +[[kohon001|<<PREV]] [[index.html|『古本説話集』TOP]] [[kohon003|NEXT>>]]
  
 ===== 翻刻 ===== ===== 翻刻 =====
  
-  いまはむかし女院はしめてうちへいらせおはし+  いまはむかし女院うちへはしめていらせおはし
   ましけるに御ひやう風ともをせさせ給て   ましけるに御ひやう風ともをせさせ給て
   うたよみともによませさせ給けるに四月/b25 e12   うたよみともによませさせ給けるに四月/b25 e12
text/kohon/kohon002.1399399496.txt.gz · 最終更新: by Satoshi Nakagawa