text:kara:m_kara006
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text:kara:m_kara006 [2014/11/07 19:28] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:kara:m_kara006 [2017/10/24 21:39] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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- | 昔、石季倫といふ人ありけり。よろづの宝に飽きて、世の貧しきを知らざりけり。金谷の園(その)のうちに、五百の舞姫(まひひめ)を集めて、喜び楽しむこと、夜昼を分かず。 | + | 昔、石季倫((石崇))といふ人ありけり。よろづの宝に飽きて、世の貧しきを知らざりけり。金谷の園(その)のうちに、五百の舞姫(まひひめ)を集めて、喜び楽しむこと、夜昼を分かず。 |
このうちに緑珠と聞こゆる舞姫なん、あまたの中にも優れたりければ、身に代(か)ふばかり浅からず((底本、「ら」に「か歟」と傍書。諸本「あさからす」))思へりけり。 | このうちに緑珠と聞こゆる舞姫なん、あまたの中にも優れたりければ、身に代(か)ふばかり浅からず((底本、「ら」に「か歟」と傍書。諸本「あさからす」))思へりけり。 | ||
- | かくて月日を送るに、時の政(まつりごと)を執れる人孫秀、この緑珠がたぐひなきありさまを聞く度(たび)に、人伝(ひとづて)ならざらんことを懇(ねんご)ろに思へりければ、堪へかねて色に出でぬ。石季倫、身をはかなきになすとも、心弱はからじと思へるを、この人、負けじ心のいちはやさに、兵(つはもの)を集め、勢ひをきはめて、心ざしをやぶる。 | + | かくて月日を送るに、時の政(まつりごと)を執れる人孫秀、この緑珠がたぐひなきありさまを聞く度(たび)に、人伝(ひとづて)ならざらんことを懇(ねんご)ろに思へりければ、堪へかねて、色に出でぬ。石季倫、「身をはかなきになすとも、心弱はからじ」と思へるを、この人、負けじ心のいちはやさに、兵(つはもの)を集め、勢ひをきはめて、心ざしをやぶる。 |
この時、緑珠((底本「緑季」。諸本により訂正))ははるかに高き楼の上に居たりけり。石季倫、かの人の手に従ひて行く行く、目を見合はせて、「誰ゆゑにかは、かくなりぬ」と言ひけるに、堪へ忍ぶへき心地せざりけりければ、楼の上より身を投げて死なんとするを、「身に勝(まさ)る物やはある」と諫(いさ)むる人、あまたありけれど、つひに聞かず。 | この時、緑珠((底本「緑季」。諸本により訂正))ははるかに高き楼の上に居たりけり。石季倫、かの人の手に従ひて行く行く、目を見合はせて、「誰ゆゑにかは、かくなりぬ」と言ひけるに、堪へ忍ぶへき心地せざりけりければ、楼の上より身を投げて死なんとするを、「身に勝(まさ)る物やはある」と諫(いさ)むる人、あまたありけれど、つひに聞かず。 |
text/kara/m_kara006.1415356103.txt.gz · 最終更新: 2014/11/07 19:28 by Satoshi Nakagawa