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text:k_konjaku:k_konjaku28-7 [2015/02/10 16:01] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku28-7 [2015/02/10 16:02] (現在) – [巻28第7話 近江国矢馳郡司堂供養田楽語 第七] Satoshi Nakagawa
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 見れば、前には「鞍置たる馬三疋」と云ひしかど、十余疋許引立たり。亦、白装束したる男、十余人許立並たり。凡そ様々の下人共、四五十人許、村々に立てり。供奉、「此れは物見る者共にや有らむ。何を見ぞ」と思て、東西を見廻せば、露見るべき物も只今見えず。船寄せつれば、下て、引き寄せたる馬に乗ぬ。共なる法師二人、亦馬に乗せて前に立たるに、今十余疋許の馬に、此の白装束したる男共はらはらと乗ぬ。「此の男共は迎へに遣せたる也けり」と、其の時になむ心得ける。 見れば、前には「鞍置たる馬三疋」と云ひしかど、十余疋許引立たり。亦、白装束したる男、十余人許立並たり。凡そ様々の下人共、四五十人許、村々に立てり。供奉、「此れは物見る者共にや有らむ。何を見ぞ」と思て、東西を見廻せば、露見るべき物も只今見えず。船寄せつれば、下て、引き寄せたる馬に乗ぬ。共なる法師二人、亦馬に乗せて前に立たるに、今十余疋許の馬に、此の白装束したる男共はらはらと乗ぬ。「此の男共は迎へに遣せたる也けり」と、其の時になむ心得ける。
  
-日の高く成ぬれば、馬を早めて怱ぎ行くに、此の白装束の男共の馬に乗たる、或は、ひた黒なる田楽を腹に結付て、袪(たもと)より肱を取出して、左右の手に桴(ばち)を持たり。或は、笛を吹き、高拍子を突き、□((底本頭注「□一本ササラトアリ))を突き、朳(えぶり)を差て、様々の田楽を二つ物三つ物に儲て、打喤り吹き乚(かなで)つつ狂ふ事限無し。供奉、此れを見て、「此は何かに為る事にか有らむ」と思へども、□て問はず。+日の高く成ぬれば、馬を早めて怱ぎ行くに、此の白装束の男共の馬に乗たる、或は、ひた黒なる田楽を腹に結付て、袪(たもと)より肱を取出して、左右の手に桴(ばち)を持たり。或は、笛を吹き、高拍子を突き、□((底本頭注「□一本ササラトアリ))を突き、朳(えぶり)を差て、様々の田楽を二つ物三つ物に儲て、打喤り吹き乚(かなで)つつ狂ふ事限無し。供奉、此れを見て、「此は何かに為る事にか有らむ」と思へども、□て問はず。
  
 而る間、此の田楽の奴原、或は馬の前に打立ち、或は馬の後に有り。或は喬(わき)手に立て打行く。然れば、供奉、「今日、此の郷の御霊会にや有らむ」と思へば、「極(いみじ)かりける折にも来り会て、此る奴原の中に具して行くは、物狂はしき態かな。不意(そぞろ)に知たる人や会はむ」と思へば、袖を以て顔をつぶと隠して行くに、郡司が家、漸く近く見ゆ。 而る間、此の田楽の奴原、或は馬の前に打立ち、或は馬の後に有り。或は喬(わき)手に立て打行く。然れば、供奉、「今日、此の郷の御霊会にや有らむ」と思へば、「極(いみじ)かりける折にも来り会て、此る奴原の中に具して行くは、物狂はしき態かな。不意(そぞろ)に知たる人や会はむ」と思へば、袖を以て顔をつぶと隠して行くに、郡司が家、漸く近く見ゆ。
text/k_konjaku/k_konjaku28-7.1423551692.txt.gz · 最終更新: 2015/02/10 16:01 by Satoshi Nakagawa