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text:k_konjaku:k_konjaku24-13 [2014/09/14 01:51] Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku24-13 [2019/12/18 18:30] (現在) – [巻24第13話 慈岳川人被追地神語 第十三] Satoshi Nakagawa
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 ====== 巻24第13話 慈岳川人被追地神語 第十三 ====== ====== 巻24第13話 慈岳川人被追地神語 第十三 ======
  
-今昔、文徳天皇の失させ給へりけるに、諸陵を点ぜむが為に、大納言安倍安仁と云ける人、承はりて其の事を行ひけり。□を引具して、諸陵の所に行く。+今昔、文徳天皇の失させ給へりけるに、諸陵を点ぜむが為に、大納言安陪安仁((安倍安仁))と云ける人、承はりて其の事を行ひけり。□を引具して、諸陵の所に行く。
  
-其の時に、慈岳(しげをか)の川人と云ふ陰陽師有けり。道に付て古にも恥じず、世に並無き者也。其れを以て、諸陵の所を点じて事畢(はて)ぬれば、皆返けるに、深草の北の程を行くに、川人、大納言の許に近く馬を打寄せて、「物云はむ」と思ひたる気を見ぬ。大納言、耳に聞けば、川人が云く、「年来墓々しくは非ども、此の道に携りて仕り、私を顧つるに、未だ誤つ事無かりつ。而るに、此の度大きに誤候にけり。此に地神追て来にたる也。其れは、貴殿と川人とこそ此の罪をば負つらめ。此は何が為させ給はむと為る。遁れ難き事にこそ侍ぬれ」と極く騒たるけしきにて云ふ。聞くに、大納言、総て物思へず成ぬ。只、「我れは此(と)も彼(かく)も思へず。助けよ」と云ふ。川人が云く、「然り」とて、「有るべき事にも非ず。試に隠れ給ふべき事を構へむ」と云て、「後に送れぬる人、皆前に行け」と進めて遣りつ。+其の時に、慈岳(しげをか)の川人((滋岳川人))と云ふ陰陽師有けり。道に付て古にも恥じず、世に並無き者也。其れを以て、諸陵の所を点じて事畢(はて)ぬれば、皆返けるに、深草の北の程を行くに、川人、大納言の許に近く馬を打寄せて、「物云はむ」と思ひたる気を見ぬ。大納言、耳に聞けば、川人が云く、「年来墓々しくは非ども、此の道に携りて仕り、私を顧つるに、未だ誤つ事無かりつ。而るに、此の度大きに誤候にけり。此に地神追て来にたる也。其れは、貴殿と川人とこそ此の罪をば負つらめ。此は何が為させ給はむと為る。遁れ難き事にこそ侍ぬれ」と極く騒たるけしきにて云ふ。聞くに、大納言、総て物思へず成ぬ。只、「我れは此(と)も彼(かく)も思へず。助けよ」と云ふ。川人が云く、「然り」とて、「有るべき事にも非ず。試に隠れ給ふべき事を構へむ」と云て、「後に送れぬる人、皆前に行け」と進めて遣りつ。
  
 而る間、日暮ぬれば、暗き交(まぎれ)に大納言も川人も馬より下て、馬をば前へ遣て、只二人、田の中に留て、大納言を居へて、其の上に田に苅置たる稲を取積て、川人、其の廻を密に物を読給つつ返し廻りて後、川人も稲の中を引開て這入りて、大納言と語て居ぬ。大納言、川人が気色極て、騒てわななき篩(ふる)ふを見るに、半(なから)は死ぬる心地す。 而る間、日暮ぬれば、暗き交(まぎれ)に大納言も川人も馬より下て、馬をば前へ遣て、只二人、田の中に留て、大納言を居へて、其の上に田に苅置たる稲を取積て、川人、其の廻を密に物を読給つつ返し廻りて後、川人も稲の中を引開て這入りて、大納言と語て居ぬ。大納言、川人が気色極て、騒てわななき篩(ふる)ふを見るに、半(なから)は死ぬる心地す。
text/k_konjaku/k_konjaku24-13.1410627092.txt.gz · 最終更新: 2014/09/14 01:51 by Satoshi Nakagawa