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text:k_konjaku:k_konjaku23-23

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text:k_konjaku:k_konjaku23-23 [2014/07/15 18:39] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku23-23 [2014/09/14 01:30] (現在) Satoshi Nakagawa
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 +今昔物語集
 ====== 巻23第23話 相撲人私市宗平投上鰐語 第(廿三) ====== ====== 巻23第23話 相撲人私市宗平投上鰐語 第(廿三) ======
  
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 暫許有れば、亦此の浪立て来る。陸の人集て、宗平に、「疾く上りね」と喤るに、宗平、耳にも聞入れずして立てり。浪既に近く来るを見れば、鰐の目を鏡の様に見成て、大口を開て、歯は剣の如く也。近く寄り来ては宗平を噉ふと見る程に、宗平、持たる鹿の足を鰐の口に入るるままに、鰐の頭の顎(あぎと)に手を指入れて、低(うつぶ)しに成て、相撲を投る如く、音を叫て陸様に投上げたれば、鰐一丈許陸に投上げられてふためくを、陸に立て見る射手共、箭を射立ければ、鰐、鹿の足を噉へ乍ら射殺しつ。 暫許有れば、亦此の浪立て来る。陸の人集て、宗平に、「疾く上りね」と喤るに、宗平、耳にも聞入れずして立てり。浪既に近く来るを見れば、鰐の目を鏡の様に見成て、大口を開て、歯は剣の如く也。近く寄り来ては宗平を噉ふと見る程に、宗平、持たる鹿の足を鰐の口に入るるままに、鰐の頭の顎(あぎと)に手を指入れて、低(うつぶ)しに成て、相撲を投る如く、音を叫て陸様に投上げたれば、鰐一丈許陸に投上げられてふためくを、陸に立て見る射手共、箭を射立ければ、鰐、鹿の足を噉へ乍ら射殺しつ。
  
-其の後、射手共集て、宗平に、「何にしてか噉はれざるぞ」と問ければ、宗平が云く、「鰐は物を噉ふには其(そこ)にて噉はずして、持行きて、必ず己が栖(すみか)に置て、其の残り有るを亦返て噉に来る也。然れば、其れを知りて、前の度に噉に来たりつるに、鹿を指遣たりつれば、鹿の頭・頸を噉切て返ぬ。次の度に来たりつるを、前足・腹骨を噉せて遣りつ。次の度に来たりつるには、尻足を持て噉せて投上たりつる也。此れを此く知らざらむ者は、一度に皆手を放て、皆噉せて、次の度は我れ必ず噉はれなむとす。案内を知らざらむ人は、此の様に為難き也。又、力無む人は、指遣て噉せむ程に、必ず突倒されなむ」と云ければ、此れを聞く射手共、有の事にぞ云ひ合へりける。+其の後、射手共集て、宗平に、「何にしてか噉はれざるぞ」と問ければ、宗平が云く、「鰐は物を噉ふには其(そこ)にて噉はずして、持行きて、必ず己が栖(すみか)に置て、其の残り有るを亦返て噉に来る也。然れば、其れを知りて、前の度に噉に来たりつるに、鹿を指遣たりつれば、鹿の頭・頸を噉切て返ぬ。次の度に来たりつるを、前足・腹骨を噉せて遣りつ。次の度に来たりつるには、尻足を持て噉せて投上たりつる也。此れを此く知らざらむ者は、一度に皆手を放て、皆噉せて、次の度は我れ必ず噉はれなむとす。案内を知らざらむ人は、此の様に為難き也。又、力無む人は、指遣て噉せむ程に、必ず突倒されなむ」と云ければ、此れを聞く射手共、有の事にぞ云ひ合へりける。
  
-隣の国まで、此れを聞て、め喤けりとなむ語り伝へたるとや。+隣の国まで、此れを聞て、め喤けりとなむ語り伝へたるとや。
text/k_konjaku/k_konjaku23-23.1405417143.txt.gz · 最終更新: 2014/07/15 18:39 by Satoshi Nakagawa