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text:k_konjaku:k_konjaku16-32 [2015/12/20 17:54] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku16-32 [2016/01/16 15:43] (現在) – [巻16第32話 隠形男依六角堂観音助顕身語 第卅二] Satoshi Nakagawa
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 而る間、十二月の晦日、夜に入て、只独り知たる所に行て、夜深更(ふけ)て家に返けるに、一条堀川の端を渡て、西へ行けるに、西より多の人、火を燃して向ひ来ければ、「止事無き人などの御すにこそ有ぬれ」と思て、男、橋の下に怱ぎ下て、立隠れたりければ、此の火燃したる者共、橋の上を東様に過けるを、此の侍、和ら見上ければ、早う、人には非ずして、怖げなる鬼共の行く也けり。或は角生たるも有り。或は手数(あま)た有るも有り。或は足一つして踊るも有り。 而る間、十二月の晦日、夜に入て、只独り知たる所に行て、夜深更(ふけ)て家に返けるに、一条堀川の端を渡て、西へ行けるに、西より多の人、火を燃して向ひ来ければ、「止事無き人などの御すにこそ有ぬれ」と思て、男、橋の下に怱ぎ下て、立隠れたりければ、此の火燃したる者共、橋の上を東様に過けるを、此の侍、和ら見上ければ、早う、人には非ずして、怖げなる鬼共の行く也けり。或は角生たるも有り。或は手数(あま)た有るも有り。或は足一つして踊るも有り。
  
-男、此れを見るに、行たる心地も為で、物も思えで立てるに、此の鬼共、皆過ぎ持行て、後に行く一つの鬼の云く、「此に人影の為つるは」と。亦、鬼有て云く、「然る者見えぬ。彼れ、速に搦めて将来れ」と。男、「今は限り也けり」と思て有る程に、一人の鬼、走り来て、男を引へて将て上ぬ。鬼共の云く、「此の男、重き咎有るべき者にも非ず。免してよ」と云て、鬼四五人許して、男に唾を吐き懸つつ皆過ぬ。+男、此れを見るに、行たる心地も為で、物も思えで立てるに、此の鬼共、皆過ぎ持行て、後に行く一つの鬼の云く、「此に人影の為つるは」と。亦、鬼有て云く、「然る者見えぬ。彼れ、速に搦めて将来れ」と。男、「今は限り也けり」と思て有る程に、一人の鬼、走り来て、男を引へて将て上ぬ。鬼共の云く、「此の男、重き咎有るべき者にも非ず。免してよ」と云て、鬼四五人許して、男に唾を吐き懸つつ皆過ぬ。
  
 其の後、男、殺されず成ぬる事を喜て、心地違ひ頭ら痛けれども、念じて、「疾く家に行て、有つる様をも妻に語らむ」と思て、怱ぎ行て、家に入たるに、妻も子も皆男を見れども、物も云ひ懸けず、亦、男、物を云ひ懸れども、妻子、答へも為ず。然れば、男、「奇異」と思ひて近く。寄たれども、傍に人有れども((底本頭注「人有レドモノ五字一本ナシ」))、有とも思えず。其の時に、男、心得る様、「早う、鬼共の我に唾を吐き懸つるに依て、我が身の隠れにけるにこそ有けれ」と思ふに、悲き事限無し。 其の後、男、殺されず成ぬる事を喜て、心地違ひ頭ら痛けれども、念じて、「疾く家に行て、有つる様をも妻に語らむ」と思て、怱ぎ行て、家に入たるに、妻も子も皆男を見れども、物も云ひ懸けず、亦、男、物を云ひ懸れども、妻子、答へも為ず。然れば、男、「奇異」と思ひて近く。寄たれども、傍に人有れども((底本頭注「人有レドモノ五字一本ナシ」))、有とも思えず。其の時に、男、心得る様、「早う、鬼共の我に唾を吐き懸つるに依て、我が身の隠れにけるにこそ有けれ」と思ふに、悲き事限無し。
text/k_konjaku/k_konjaku16-32.1450601664.txt.gz · 最終更新: by Satoshi Nakagawa