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text:k_konjaku:k_konjaku15-6 [2015/10/01 16:09] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku15-6 [2015/10/01 16:10] (現在) – [巻15第6話 比叡山頸下有癭僧往生語 第六] Satoshi Nakagawa
行 6: 行 6:
 其の所にして、日夜寤寐に念仏を唱へ、尊勝・千手等の陀羅尼を誦して、偏に極楽に生れむと願ひて年来を経るに、其の癭有□□□((底本頭注「有ノ下一本シニノ二字アリ」))、仏力の助を以て𡀍((口へんに愈))にけり。然りと云へども、僧、「譬ひ本の所に返て、世の事を営むべしと云へども、此れ幾(いくばく)に非ず。死て悪道に堕むよりは、如かじ、只念仏を修して、後世を祈て、此の所を出でじ」と思ひ取て、籠り居て行ひけり。 其の所にして、日夜寤寐に念仏を唱へ、尊勝・千手等の陀羅尼を誦して、偏に極楽に生れむと願ひて年来を経るに、其の癭有□□□((底本頭注「有ノ下一本シニノ二字アリ」))、仏力の助を以て𡀍((口へんに愈))にけり。然りと云へども、僧、「譬ひ本の所に返て、世の事を営むべしと云へども、此れ幾(いくばく)に非ず。死て悪道に堕むよりは、如かじ、只念仏を修して、後世を祈て、此の所を出でじ」と思ひ取て、籠り居て行ひけり。
  
-而る間、同山に住む僧有り。名を普照と云ひけり。同院に住む間、普照、「麦の粥を煮て、院の内の人に施せむ」と思ふ心有て、其の粥を煮むが為に、一夜湯屋の鼎((底本異体字「𣂰」))(かなへ)の辺に有るに、俄に、艶(えもいは)ず馥しき香、山に満て、微妙の音楽の音、空に聞ゆ。普照、此れを怪しび思ふと云へども、何事と知らずして、仮そめに寐たる夢に、一の宝を以て厳(かざ)れる輿((底本異体字「轝」))(こし)有り。砂磑の峰より西方を指て飛去ぬ。多くの止事なき僧共の法服を着せる、及び、多の音楽を調ぶる様々の天人の如くなる人等、皆此の輿を囲遶して、前後左右に有て、輿に随て□□((底本頭注「随テノ下一本行ヌトアリ」))。遥に輿の中を見れば、彼の砂磑の峰に住する僧、此の輿に乗たりと見て、夢覚ぬ。+而る間、同山に住む僧有り。名を普照と云ひけり。同院に住む間、普照、「麦の粥を煮て、院の内の人に施せむ」と思ふ心有て、其の粥を煮むが為に、一夜湯屋の鼎((底本異体字「𣂰」))(かなへ)の辺に有るに、俄に、艶(えもいは)ず馥しき香、山に満て、微妙の音楽の音、空に聞ゆ。普照、此れを怪しび思ふと云へども、何事と知らずして、仮そめに寐たる夢に、一の宝を以て厳(かざ)れる輿((底本異体字「轝」))(こし)有り。砂磑の峰より西方を指て飛去ぬ。多くの止事なき僧共の法服を着せる、及び、多の音楽を調ぶる様々の天人の如くなる人等、皆此の輿を囲遶して、前後左右に有て、輿((底本異体字「轝」))に随て□□((底本頭注「随テノ下一本行ヌトアリ」))。遥に輿の中を見れば、彼の砂磑の峰に住する僧、此の輿に乗たりと見て、夢覚ぬ。
  
 此の後、普照、此の夢の虚実を知らむと思ふ間に、人有て云く、「彼の砂磑の峰に住する僧、今夜既に失にけり」と。普照、此れを聞て、「実に彼の僧の極楽に参ける也」と知りて、同法の僧共に、「我れ、正く今夜、極楽に往生する人を見つる」と語て、貴びけり。此れを聞く人、亦、悲び貴ばずと云ふ事無かりけり。 此の後、普照、此の夢の虚実を知らむと思ふ間に、人有て云く、「彼の砂磑の峰に住する僧、今夜既に失にけり」と。普照、此れを聞て、「実に彼の僧の極楽に参ける也」と知りて、同法の僧共に、「我れ、正く今夜、極楽に往生する人を見つる」と語て、貴びけり。此れを聞く人、亦、悲び貴ばずと云ふ事無かりけり。
text/k_konjaku/k_konjaku15-6.1443683355.txt.gz · 最終更新: 2015/10/01 16:09 by Satoshi Nakagawa