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隆房集

75 波越さぬさきより袖は濡れにけり思ひ続くる末の松山

校訂本文

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思ひ残すことなく、思続くる折節(をりふし)には、「かくて過ぎ来むほどに、あらぬかたざまにや聞きなさんとすらん」と思ふ悲しさは、いふばかりなし。あらましごとに、「波や越さむ」と言ひしことも思ひ出でられて、「もしさることもあらば、いかにせん」など思ふもいまいましければ、

  波越さぬさきより袖は濡れにけり思ひ続くる末の松山

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翻刻

 おもひのこす事なく
 思つつくるおりふしには/s33l

https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100002834/33?ln=ja

 かくてすきこむほとに
 あらぬかたさまにやきき
 なさんとすらんとおもふかな
 しさはいふはかりなし
 あらましことになみやこ
 さむといひしことも思いて
 られてもしさる事もあらは
 いかにせんなと思もいまいまし
 けれは
なみこさぬさきより袖はぬれにけり
思ひつつくるすゑのまつやま/s34r

https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100002834/34?ln=ja