思ひ残すことなく、思続くる折節(をりふし)には、「かくて過ぎ来むほどに、あらぬかたざまにや聞きなさんとすらん」と思ふ悲しさは、いふばかりなし。あらましごとに、「波や越さむ」と言ひしことも思ひ出でられて、「もしさることもあらば、いかにせん」など思ふもいまいましければ、
波越さぬさきより袖は濡れにけり思ひ続くる末の松山
おもひのこす事なく 思つつくるおりふしには/s33l
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100002834/33?ln=ja
かくてすきこむほとに あらぬかたさまにやきき なさんとすらんとおもふかな しさはいふはかりなし あらましことになみやこ さむといひしことも思いて られてもしさる事もあらは いかにせんなと思もいまいまし けれは なみこさぬさきより袖はぬれにけり 思ひつつくるすゑのまつやま/s34r