醒睡笑 巻8 祝ひすました
左大臣信長公1)、ある年の元日暁(あかつき)、雑煮の御膳すわりけるを御覧ずれば、箸方々(かたかた)あり。「これは何者のしわざぞ」とて、大いに御気色変はれり。大相国いまだ木下藤吉郎殿2)にて御座の時、「お機嫌悪しきはさることながら、当年より諸国をかたはしどりになさるべき瑞相(ずゐさう)なり」とありければ、これにて御腹立(ごふくりう)やみぬ。
案のごとく、その年より国々を従へ給ひきとかや。
一 左大臣信長公あるとしの元日あかつきさうに の御膳すはりけるを御覧すれは箸かたかた ありこれはなにもののしわさそとて大に御気 色かはれり大相国いまた木下藤吉郎殿に て御座の時お機嫌あしきはさることなから当 年より諸国をかたはしとりになさるへき瑞相/n8-61r
なりとありけれはこれにて御腹立やみぬあん のことくそのとしよりくにくにをしたかへたま ひきとかや/n8-61l