醒睡笑 巻8 祝ひすました
抑(そもそも)、四十六代孝謙天皇の御宇、天平勝宝元年己丑の春、始めて奥州より黄金を献ず。「重宝参りたり」とて、大伴家持1)に歌召されければ、
皇(すべらぎ)の御代栄えんと東(あづま)なるみちのく山に黄金(こがね)花咲く
と祝ひすまして、これより元和九年まで、八百六十五歳なり。和朝の山に2)黄金涌くこと、いよいよ増されり。
祝済多 一 抑四十六代孝謙天皇の御宇天平勝宝元年 己丑の春始て奥州より黄金を献す重宝 参りたりとて大友家持に哥めされけれは 皇の御代さかへんとあつまなる みちのく山にこかね花さく と祝ひすまして是より元和九年まて八 百六十五歳なり和朝の山そ黄金涌事 弥増れり/n8-60l