醒睡笑 巻8 茶の湯
法師、あまた少人(せうじん)をともなひ、清水1)へ詣でしが、まづ茶屋に寄り休(やす)らふ。
その中に一人の若衆、甘茶を望み多く飲む。指南の法師思ふ、「甘き物は虫2)にたたる」と。また、「さきにては苦しからず。今はまづこらへられよ」と教訓しければ、「ここな人は、仰山(ぎやうさん)さうに。一斤飲うでも、銭二十こそすれ」。
一 法師あまた少人をともなひ清水へまふてしか まつ茶屋によりやすらふ其中にひとりの若 衆甘茶をのそみおほくのむ指南の法師 おもふあまき物はむしにたたると又さきに てはくるしからす今はまつこらへられよと教 訓しけれは爰な人はけうさんさうに一斤 のうても銭廿こそすれ/n8-55l