醒睡笑 巻8 かすり
「武家の愁傷あり」と聞いて、弔(とぶら)ひにつかはす。「口上に、『御親父逝去のこと、是非なし。しかし生老病死の習ひ、いたつて歎きあるまじく候ふ』と言へ」。
右の使者、「生老病死」をうち忘れ「だんずるべうし1)」と申しければ、「されば、親にて候ふ者、ひりやひりやにふりよ2)に果てて候ふ」と。
当意即妙なるうけあひかな。
一 武家の愁傷ありときいて弔につかはす口上 に御親父逝去の事是非なし併生老病死 のならひいたつて歎有まじく候といへ右の使 者生老病死を打わすれだんするべうし と申けれはされは親にて候者ひりやひりやに ふりよにはてて候と 当意即妙なるうけあひ哉/n8-36r