醒睡笑 巻7 舞
人々、池の辺に遊ぶ蛙(かはづ)を見付け、塊(つぶて)を打つ。年ふけたる人、「さやう悪(わろ)き手すさびをはせざれ。今こそ生れさがり、田の中、堀の端(はた)に住め1)、いにしへはあれも大名であつたものを」。「虚空なることを言ふ」。「まぎれもなし。夜討曽我(ようちそが)に、『さこそ尊霊(そんりやう)かはづ殿2)』とて、あだにも言はぬは」。
一 人々池の辺(ほとり)にあそぶ蛙(かはず)を見付塊(つぶて)をうつ年(とし) ふけたる人さやふわろき手すさひをはせざ れ今こそ生れさがり田の中堀のはたにため いにしへはあれも大名であつた物をこくう なる事をいふまきれもなし夜討(ようち)曽我に さこそ尊霊(そんりやう)蛙(かはづ)殿とてあたにもいはぬは/n7-57l