醒睡笑 巻7 謡
和泉の堺に山本雅楽(やまもとうた)とて、小鼓の上手あり。幽閑法印1)、政所(まんどころ)なりし時、能あり。法印、かの雅楽を招き、「そちは三輪2)を打たれよ。『三輪の山もと3)』とあるなれば」。言下に、「かたじけなや。ことによみて見たれば、うたなり」と申せしは、しほらしや。
一 和泉の堺に山本(もと)雅楽(うた)とて小鼓(こつつみ)の上手 あり幽閑(ゆうかん)法印政所(まんところ)なりし時能あり法 印彼雅楽をまねきそちは三輪をうた れよ三輪の山もととあるなれは言下に かたしけなやことによみて見たれはうたな りと申せしはしほらしや/n7-48l