醒睡笑 巻7 廃忘
ある僧、新しき小刀の大きなるを持ちて、鰹(かつを)を削りゐけるところへ、知音(ちいん)の人、思ひよらず来たれり。あまりに取り乱し、小刀を鰹と思ひ急ぎて隠し、鰹を小刀と思ひさし出だし、「このごろ関の小刀を求めた。御覧ぜよ」とぞ申しける。
物の切れぬ小刀であらうの1)。
一 ある僧新(あたらしき)小刀の大なるをもちて鰹(かつを)をけ つりゐける処へ知音の人おもひよらず来/n7-31l
れりあまりにとりみたし小刀を鰹(かつを)と思ひ いそぎてかくし鰹を小刀とおもひさし 出し此比関(せき)の小刀をもとめた御覧せよ とそ申ける 物のきれぬ小刀であらふの/n7-32r