醒睡笑 巻6 うそつき
神妙1)にもなき人、集りゐける中に、一人言ふ、「そなたたちのうちに、雷(かみなり)の鮨(すし)を食うた人があるか」。「いや、なし」。「さうあらう。まれな物ぢやほどに」。「して、そちは食うたか」。「なかなか食うた」。「味は甘いか酸(す)いか」と問ふに、「ちと雲臭かつた」と。
一 神様にもなき人あつまりゐける中に一人 いふそなたたちのうちにかみなりのすしをくふ た人かあるかいやなし左右あらふまれな物 しやほとにしてそちはくふたか中々くふた味は あまいかすいかととふにちと雲くさかつたと/n6-64r
雲無心にして岫を出とあれは土くさいとせめていへかし/n6-64l