醒睡笑 巻6 うそつき
「京辺土(きやうへんど)のことならば、幾度も見たが病(やまひ)で、知らぬといふ所はなし。世の中の人の見たなど言ふは、白河を夜舟に乗りたるたぐひならん。それがしがやうに見覚えたる者はあるまいと思ふ」。「うらやましや。さて、祇園と清水1)との間は、いかほどの遠さぞや」と問ふ時、扇に書きたる絵を広げ、「それは一寸ほどあらうまでよ」と。
一 京辺土の事ならは幾度も見たがやまいて しらぬといふ処はなし世中の人のみたなといふは 白河を夜舟にのりたるたくひならん某か/n6-63l
やうに見覚たる者はあるまいと思ふ浦山 しやさて祇園と清水との間はいかほとのとをさ そやと問時扇に書たる絵をひろけそれ は一寸ほとあらふまてよと/n6-64r