醒睡笑 巻6 詮ない秘密
田夫、畠を打つ折節、隣郷(りんがう)の百姓通りあはせ、「これは何を蒔くぞ」と言ふに、かの畠打ち小手招きし、「あ、声が高い。低(ひき)う、低う」と言ふ。「さては世にまれなる物の種をも植ゆるにや」と思ひ、「心得たり」と近く寄りたれば、いかにもおのれが調子を低(ひき)く、「大豆を蒔く。鳩が聞くほどに」。
詮ない秘密 一 田夫畠をうつおりふし隣郷の百姓とをり あはせこれはなにをまくそといふに彼はた うちこてまねきしあ声かたかいひきうひきうと いふさては世にまれなる物のたねをもうゆる にやとおもひ心得たりとちかくよりたれは如何にも をのれか調子をひきく大豆をまく鳩かきく程に/n6-38l