醒睡笑 巻6 恋のみち
亭主の心に、「女房はよく寝入りたるや」と思ひ、二階に候ふ下主(げす)のもとへ、そと忍びたれば、妻はよく知りて、火を灯(とぼ)し、あとより上がる。男、着る物をかぶり、座敷の隅にうつぶしになり、かがみけるを、あまりのをかしさに、女房、「ここななりは。そのまま鶉(うづら)のやうに」と言ひしを、男、言葉はなくて、「ちちくはい」と。
図にはづれた鶉であらうよ1)。
一 亭主の心に女房はよくねいりたるやとおもひ二 階に候下主の本へそと忍ひたれは妻はよ/n6-32r
くしりて火をとほしあとよりあかる男きる物 をかぶり座敷のすみにうつぶしになりかがみける をあまりのおかしさに女房ここななりはその まま鶉のやうにといひしを男ことばはなくてち ちくはいと つにはつれた鶉てあらふよ/n6-32l