醒睡笑 巻6 恋のみち
老母・老父と成人の男子、三人一処にあり。さらでだに1)いぶせきはいりの小屋、春雨すさぶ永日(えいじつ)なれば、暮らしかねたるつれづれに、老父、息子に向かひ、「俳諧をして遊ばんものを」と言ふに、男子、「もつとも」と同(どう)じ、発句をする。
父(てて)ぢや者母(はは)ぢやが者にうち迷ひ
老父、「さらば付けん」と、
それにつけてぞをおれできける
一 老母老父と成人の男子三人一処にありき/n6-31l
らてだにいふせきはいりの小屋春雨すさふ永 日なればくらしかねたるつれつれに老父むすこ にむかひはいかいをしてあそはん物をといふに 男子もつともと同し発句をする ててしやものははしやか者にうちまよひ 老父さらはつけんと それにつけてそをのれてきける/n6-32r