醒睡笑 巻6 児の噂
児(ちご)の泊りに来て、夜はやうやう更けゆけど、菓子をさへ出すよしもなければ、枕を取り上げ、口に当て当てしけるを、そばなる者、「それは何といふことぞや」。「わざと祝うて、歯に物をあてそむる」と。
平清盛公、大塔再興ありて参詣の時、つつがなき歯を一つ、手づから抜き、奥院に籠め給ひ、
高野山(たかのやま)おろす嵐のこはくともこのはは1)残せ後の世のため
一 児のとまりにきて夜はやうやうふけゆけど 菓子をさへ出すよしもなけれは枕を取あ け口にあてあてしけるをそはなる者それは なにといふ事そやわさといはふて歯に物 をあてそむると 平清盛公大塔再興ありて参詣の時つつが なき歯を一つ手つからぬき奥院に籠給ひ 高野山おろす嵐のこはくとも/n6-15l
此はは残せ後の世のため/n6-16r