醒睡笑 巻6 児の噂
坊主、餅を一つ持ちて出で、二つに割り、「児(ちご)三人の中にて、秀句を言うて食はれよ」とあれば、小児、「この餅は三日月で、片割れあるよ」と言ひ、やがて取りけり1)。次の児、「はや月は山の端に入るよ」と言ひ取りてけり。
大児に向かひ、「そなたは心何とあるや」。「そのことよ。月入りて後(あと)なれば、わが晦2)は闇のやうな」と。
一 坊主餅を一つもちて出二つにわり児三人の 中にてしうくをいふてくはれよとあれは 小児此餅は三日月てかたはれあるよといひや かてよりけり次の児はや月は山の端に入 よといひとりてけり大児にむかひそなたは 心なにとあるや其事よ月入てあとなれは 我晦はやみのやうなと/n6-8l