醒睡笑 巻5 婲心
細川幽斎公の姉御前に、宮川殿1)とかやいうて、建仁寺の内、十如院といふにおはせしことありき。長岡越中殿2)より、「大津にて米を百石参らする」よしの文を見給ひ、その返事に、
御普請の役にも立たぬこの尼が百のいしをばいかで引くべき
とありしを、「げに、ことわりや」と、すなはち車にて送り給ひし。
一 細川幽斎公の姉御前(あねごぜん)に宮川殿とかや/n5-4l
いふて建仁寺(けんにんじ)の内十如院といふにおはせ し事ありき長岡越中殿より大津にて 米を百石参らするよしの文を見たま ひその返事に 御普請(ふしん)のやくにもたたぬ此尼(あま)か 百の石をはいかでひくへき とありしをげに理(ことはり)やと即(すなはち)車にて送給ひし/n5-5r