醒睡笑 巻4 そでない合点
借銭(しやくせん)を乞ひに、いくたび人をつかはせども、なすことなし。さらばとて、直(ぢき)に行く。
「これの亭主、道善にあはむ」と言ふ時、亭出でて、「道善は留守に候ふ」と言ふ。「いや、そちは道善ではなきか」。「さて、ここな人は、亭主の道善が直にあひて留守と言ふを、疑はるるかや1)」と。
一 借銭(しやくせん)を乞(こひ)に幾度(いくたび)人を遣せどもなす事 なしさらはとて直(ちき)に行(ゆく)これの亭主道善(たうぜん) に逢(あは)むと云時亭出て道善はるすに候と云 いやそちは道善てはなきか扨ここな人は 亭主の道善か直に逢てるすと云をまだ かはるるかやと/n4-53r