醒睡笑 巻4 そでない合点
山家(やまが)の者とて、老いたる姥(うば)の、杖にすがり京に出でたるを、ある者行き合ひ、「そちの年はいくつぞ」。「百に一つ足らぬ」と語るにぞ、「さてさて名人や」と、いくたびも讃めゐけるを、始めより道づれしたる者、「何事あれば感にたゆる」。「さればよ、生き名人とは、あれをや言ふらん」と。
一 山家の者とて老たる姥(うは)の杖(つえ)にすかり京(きやう) に出たるをある者ゆきあひそちの年はいく つそ百に一つたらぬとかたるにぞさてさてめ いしんやといくたひもほめゐけるを始より 道つれしたる者何事あれはかんにたゆるさ れはよいきめいしんとはあれをやいふらんと/n4-49l