醒睡笑 巻4 そでない合点
愚かなる女房の、夫(おつと)に向ひさらさらなきことを言ひ続け、妬むことあり。何と言ひ含めても聞かず。せん方なさに、「その儀ならば、大なる誓文(せいもん)を立てん」と、扇を持ち座を叩く叩く「下化衆生(けげしゆじやう)して金輪際(こんりんざい)に落つる法もあれ、さうではない」と喚(わめ)きければ、女房まことに思ひ、肝をつぶし、「それやうに恐しいことは言はぬものぢや」と。
一 をろかなる女房の夫(おつと)にむかひさらさらなき 事をいひつつけねたむ事ありなにといひ ふくめてもきかすせんかたなさに其儀ならは 大なるせいもんをたてんと扇をもち座を たたくたたく下化衆生(けけしゆしやう)してこんりんさいにお つる法もあれさうてはないとわめきけれはね うはうまことにおもひきもをつふしそれやう におそろしい事はいはぬものしやと/n4-39r