醒睡笑 巻4 そでない合点
児に髪を結ひて参らする侍従、ある朝、「われをば何ほどふびんに思し召すや」と問ふ。児、櫛の歯に水をつけ、その雫(しづく)を落し、「この露ほど大切なる」よしあれば、「曲(きよく)もなや。なんぼう奉公いたすも1)、いたづらごとや」と深く恨みける時、
露といふ心を知らぬはかなさよ消ゆるばかりに思ふわが身を
僧都源信
人の身を露の命といひけるもつひには野辺に置けばなりけり
一 児(ちこ)に髪をゆひて参らする侍従(じじう)ある朝 われをはなにほとふひんに思召やととふ児 櫛のはに水をつけその雫(しつく)を落(おと)し此露 ほとたいせつなるよしあれは曲(きよく)もなやなむ ほう奉公(ほうこう)いそすもいたつら事やとふかくうら みける時露といふ心をしらぬはかなさよ消(きゆ)る はかりにおもふ我身を 僧都源信 人の身を露の命といひけるも/n4-37l
つゐには野辺にをけはなりけり/n4-38r