醒睡笑 巻4 聞こえた批判
市の立つ町のかしらに小宮を建てて、夷(えびす)の作りたるあり。立ち寄る者、「あら、いつくしのえびすや」と褒むるを聞いて、「あれを『えびす』とは言はぬものぞや。『きびす』と言ふが本(ほん)なり」とからかふ。
「町奉行へ上げてすませ」と、双方出でたりければ、「どちも大事なし。木にて作りたるは、何時(なんどき)も『きびす1)』、紙に描きたるは、いつとても『えびす2)』と言ふべし」。
一 市のたつ町のかしらに小宮(みや)をたてて ゑびすの作りたるありたちよるものあら いつくしのゑびすやとほむるをきいてあれ をゑひすとはいはぬ物ぞやきびすといふがほん/n4-4l
なりとからかふ町奉行(まちぶぎやう)へあけてすませと双方 出たりけれはどちも大事なし木にてつくり たるはなんときもきびす紙(かみ)にかきたるはいつとても ゑひすといふへし/n4-5r